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町へ……
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しおりを挟む出かける準備ができ、今、まさに馬車に乗ろうとした時、義姉さまを呼び止める声が聞こえた。
ちょうど到着したところらしく、馬車を急いで降りてくるジェスターの姿を見ながら、僕は絶望する。
「誕生日おめでとう、クラリス」
大きな花束を受け取った義姉さまの両腕の中は、オレンジとイエローの花達が咲き誇り、まるでお花畑にいるようだった。
「わぁ、ありがとうございます。いい香り!」
「やっぱり、クラリスはオレンジがよく似合う」
ジェスターは満足げに微笑んだ後、不思議そうな顔をした。
「どこか行くの? 朝、連絡いれたんだけど」
「えっ?」
「ミカエルに聞いてない?」
「あっ!!」
すっかり、忘れてた……
義姉さまの口ごもっている様子でジェスターは理解したらしく、僕を軽く睨みつける。
「故意じゃないから。ホント、忘れてた。ごめん。アルベルトから花なんて届くからさ」
ほんとにほんと。
邪魔してやろうとか、そんな邪心はまったく無く、ただただ純粋に忘れてた。
ジェスターは眼鏡を押し上げ、眉をひそめる。
「……アルベルト……からも?」
「そうだよ。アルベルトはメッセージ付き。ジェスター、用事は終わったんでしょ? 帰りなよ」
ジェスターの伝言を忘れていたことは、大変申し訳なかったけれど、とにかく早く帰って……
僕は祈る。
ひたすら祈る。
「……で、2人はどこに行くの?」
だよね……
僕の必死な祈りはジェスターには届かず……いや、察しがいい彼のこと、届いてはいたと思うけど、あえて無視し、無慈悲な質問を飛ばす。
僕は言葉に詰まり、黙ってしまう。
「これから町に行くんです」
あああ……義姉さま……ぶっちゃけないで……
「そうか……じゃあ、僕も一緒に行ってもいいかい?」
「もちろんですわ」
「えええ……」
義姉さまがジェスターに微笑み、僕は口から不満に満ちた声が漏れてしまった。
アルベルトといい、ジェスターといい……僕と義姉さまがデートするタイミングで現れるのはお約束ってやつなの!?
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