1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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誕生日の約束は……

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 子供の頃は広いと思っていた屋根裏部屋は、16歳になった僕達には少し手狭な空間に感じられた。

 薄暗い部屋で義姉さまは僕に肩を寄せて座る。

「ミカエルにお祝いしてもらうのも、残り少ないかもね」

 ランプの火を眺めながら、ふふっと微笑む義姉さまに、僕は切なさを感じずにはいられなかった。

「ずっとだよ。僕はずっと義姉さまを1番にお祝いするよ」
「ありがとう、嬉しい。じゃあ、ミカエルに恋人ができるまでは、義姉ちゃんのお祝いしてね」

 義姉さまの瞳に寂しさの色がチラリと見えたが、すぐにかき消され、茶目っ気たっぷりに笑う。
 無邪気な言葉は僕の心に「義弟おとうと」というずっしりとした重しをのせた。

「本当にずっとだよ」

 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でポツリとつぶやく。

 たぶん聞こえなかったんだろう。
 義姉さまはすでに他愛もない話を始めていたから。

 僕は相槌を打ちながらも、ランプのあかりに照らされた義姉さまに見惚れて、話の半分も頭に入ってこなかった。
 髪をサイドにまとめた義姉さまのうなじが、いつもより色っぽく見え、ドキドキが止まらない。

 目のやり場に困り、視線を反対側にむけたが、ほんのり甘い香りが漂い、僕は目眩めまいを覚える。

 こんなにそばにいるのに、抱きしめることもできないなんて。

 今、抱きしめてしまったら、僕は義弟には戻れない。そばにいる事すら叶わなくなってしまう。

 触れたら、壊れる。

 あの日の湖面の星のように。

 掻きむしりたくなるようなやるせない気持ちが、もし……なんて考えても仕方のない事を想像させる。

 もし、従姉弟いとことして出会っていたら?

 僕は義姉さまに触れる事ができた……?
 僕は義姉さまを抱きしめる事ができたのかな……と。


 0時を知らせる時計の鐘が小さく鳴り、日付が変わる。


「誕生日おめでとう、義姉さま」

 最高の笑顔を義姉さまにむけた。

 この瞬間が僕は好きだ。

 誰よりも早く義姉さまを祝福できる喜びとともに、あの日の誕生日を思い出すから。
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