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再会し……

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 門のそばで僕を待っている義姉さまを見つけ、足を早める。

 早くカフェに行けば、そのぶん一緒にいられるしね。

 声を掛けようとした瞬間、義姉さまに近づく男の姿が目に映り、息を呑んだ。

 男は声を掛け、驚き、固まっている義姉さまの肩に手を伸ばし……

 肩に手が触れる直前に、僕はその手首を掴み、前に立った。
 義姉さまを僕の背に隠す。

「触るな」

 怒りを込めて睨みつけても、下品にニタニタ笑う男は、僕の肩に手を置き、嫌な言葉を口にした。


「おおっ、ミカエル、我が息子よ」


 心臓が力いっぱい絞られているかのように痛い。
 再認識させられる。

 僕がこの男の息子だということを。

「お前のおかげでシーメス家が助かった。まぁ、わしの息子なんだから、当然だが」

 当然だが? 当然なわけない。すべてはファンレーの為にやったこと。
 お前のためになんて1ミリも思っちゃいない。

 前男爵の手首をギュッと握りながら、にっこり笑う。

「いえ、当然ではありません。アルフォント家とシーメス家は無関係。すべてはアルフォント公爵様のご慈悲ですよ?」

 酔っているのか、やたらニヤニヤしている前男爵の口から出た息が僕にかかる。

 酒臭く、気持ち悪い。

「まぁ、そんなことはどうでもいい。ファンレーをお前達で預かっているんだろう? あいつはシーメス家の当主。当主が不在だと体裁が悪い……が、しばらく我慢してやる。その代わり、もう少し金を融通してくれ。お前なら少しぐらい金を動かせるんだろう」

 僕の心の中で怒りの炎がチリチリとくすぶり始める。

 なにが体裁が悪いだ。
 本来なら、お前が没落させていた家門のくせに。
 僕を強請ゆすっているつもりなのか? なんて図々しい。

「アルフォント公爵様の計らいにより、シーメス家の存続は僕の胸三寸で決まります。それぐらいの権限は僕にはありますよ?」

 僕は怒りを悟られないよう笑顔で答える。
 
「さすが! 我が息子」

 馬鹿……なの? 
 シーメス家がどうなってもいいのか?っていう脅しなのに。
 言葉の機微きびにも気づかないようじゃ、この世界やっていけないよ?
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