163 / 298
再会し……
2
しおりを挟む門のそばで僕を待っている義姉さまを見つけ、足を早める。
早くカフェに行けば、そのぶん一緒にいられるしね。
声を掛けようとした瞬間、義姉さまに近づく男の姿が目に映り、息を呑んだ。
男は声を掛け、驚き、固まっている義姉さまの肩に手を伸ばし……
肩に手が触れる直前に、僕はその手首を掴み、前に立った。
義姉さまを僕の背に隠す。
「触るな」
怒りを込めて睨みつけても、下品にニタニタ笑う男は、僕の肩に手を置き、嫌な言葉を口にした。
「おおっ、ミカエル、我が息子よ」
心臓が力いっぱい絞られているかのように痛い。
再認識させられる。
僕がこの男の息子だということを。
「お前のおかげでシーメス家が助かった。まぁ、わしの息子なんだから、当然だが」
当然だが? 当然なわけない。すべてはファンレーの為にやったこと。
お前のためになんて1ミリも思っちゃいない。
前男爵の手首をギュッと握りながら、にっこり笑う。
「いえ、当然ではありません。アルフォント家とシーメス家は無関係。すべてはアルフォント公爵様のご慈悲ですよ?」
酔っているのか、やたらニヤニヤしている前男爵の口から出た息が僕にかかる。
酒臭く、気持ち悪い。
「まぁ、そんなことはどうでもいい。ファンレーをお前達で預かっているんだろう? あいつはシーメス家の当主。当主が不在だと体裁が悪い……が、しばらく我慢してやる。その代わり、もう少し金を融通してくれ。お前なら少しぐらい金を動かせるんだろう」
僕の心の中で怒りの炎がチリチリと燻り始める。
なにが体裁が悪いだ。
本来なら、お前が没落させていた家門のくせに。
僕を強請っているつもりなのか? なんて図々しい。
「アルフォント公爵様の計らいにより、シーメス家の存続は僕の胸三寸で決まります。それぐらいの権限は僕にはありますよ?」
僕は怒りを悟られないよう笑顔で答える。
「さすが! 我が息子」
馬鹿……なの?
シーメス家がどうなってもいいのか?っていう脅しなのに。
言葉の機微にも気づかないようじゃ、この世界やっていけないよ?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
47
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる