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交渉は……
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しおりを挟む胸ポケットから時計を取り出す。
交渉時間は予定通り。
「今日はこの辺で……」と帰り支度を始めた僕は、サインした契約書類をパラパラめくっていたバードに話しかけた。
「ああ、それから、旅行の件ですが、楽しみにしてますよ」
「……なっ……お誘いしたのはクラリ」
驚き、一瞬詰まりながら反論するバードの言葉を僕はニマニマと遮る。
「ハルダミティアル王国でしたっけ? とても美しい国と聞いております。恋人との旅行の下見だとか? 羨ましい限りです。義姉、張り切っていますよ。どんな女性でも気に入るデートコースを一緒に考えなきゃって。バード様のお眼鏡にかなったご令嬢はどなたかしら?幸せになって欲しいわぁ。なんて、嬉しそうに語っておりました。ああ、もちろん、どちらのご令嬢とご旅行されるのか存じ上げませんが、僕も義姉と一緒に応援いたしますよ、バード様」
そう、君の口説き文句は、まぁぁぁったく本人に伝わってないからね?
旅行に誘い、喜んでと笑顔で返事を貰う……想いが通じたと思っていたのだろう……バードはガクッと肩を落とし、落胆した声を出す。
「そ……です……か……わかりました。私は少々甘かったわけですね。やり方を変えねば……ご忠告ありがとうございます。ミカエル様」
気落ちしているにもかかわらず、にっこり笑うバードに僕は微笑みを返す。
ふうん……義姉さまを好きになる男はご多分に漏れず、諦めが悪いな。
諦めろっちゅーの!!
応援ありがとうございます!
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