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交渉は……

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 僕はクスッと笑った。
 
「もちろんです。アルフォント家に利にならない行動は致しませんからね。しかしながら、我が家はいろいろ質の良い物を扱っていますし、蜂蜜でなくてもいいんですよ? ワラントをとるのは」

 ちょっと脅しっぽくなっているけど、仕方ない。
 これは交渉なのだから。

「…………」

 今、バードの頭の中は、いろんな事を天秤にかけているはず。
 僕は最高の笑顔でとどめの一言を添える。

「名誉はお金で買えませんよ?」

 この言葉はバードの肩をピクッと震えさせた。

 まぁ、半分嘘だけど。名誉もお金で買える時もあるけどさ。
 ただ、ワラントはお金をいくら積んでも認定されないものだしね。

「ファンレーは勉強熱心で真面目です。きっとハミルトン家への御恩は忘れないでしょう。将来、ハミルトン家に何かあった時、役立ってくれると思いますよ? もし、万が一、ファンレーが役に立たなければ、アルフォント家がバックアップいたしましょう。もちろん、時と場合によりますが。どうです? ファンレーを育てるのはメリットがあると思いますが?」

 今後3年の蜂蜜の買取、ワラント取得、いざという時はアルフォント家の後ろ盾。
 
 これだけの条件を並べれば、ファンレーをしっかり育ててくれるだろう。

 バードは「はぁ……」と小さく息を吐き、踏ん切りがついた表情で僕を見た。

「わかりました。ファンレー・シーメス男爵に貿易のノウハウをお教えいたします」
「ええ、よろしくお願いいたします。一流に育ててやってください」

 交渉成立。

 僕は満面の笑顔をバードにむける。
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