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異母弟が……

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 ファンレーは義姉さまに「かわいい」と言われ、恥ずかしくなったのか、モジモジしだす。

 あれ?

「ミカエルの異母弟おとうとか。何となく雰囲気も似てるな」

 遅れてきたジェスターも興味深そうに、まじまじと見始め、ファンレーは耳まで赤くなった。

「そうですよね。ミカエルに似て、すっごくかわいい」

 義姉さまは、それはそれは嬉しそうに頷きながらジェスターに同意する。

 かわいい? 僕に似て?
 えっ? 僕……かわいい? 16歳の男なんだけど……かわいい?
 なんか、今、地味に傷ついたんですが。

 ショックを受けている僕の思考を読み取ったのか、おかしくて我慢できない様子でプッと吹き出したジェスターを僕は軽く睨んだ。

 笑うな!!

「あの、あの……クラリス様ですか?」
「そうよ。私の事はお姉ちゃんと呼んでね」
「義姉さま!」

 あまりにも義姉さまの順応が早く、僕の方が焦って、声を上げる。

「あら、だって、ミカエルの弟は私の弟同然よ」
「いや、だって……」

 今日が初対面だよ?
 ファンレーだって公爵令嬢に「姉さま」なんて、やすやすと呼べるはずな……

「お姉さま……」

 呼ぶのかいっ!!

「かっわいいーーーー」

 お姉さま……と呼ばれたことが余程嬉しかったのか、歓喜の声を上げ、ファンレーの頭を両手で撫でまくり、彼の髪の毛はボサボサになってしまった。

 その様子を横目で見ては、僕は小さく溜息を漏らす。

 ……なぜ、義姉さまは「お姉さん」と呼ばれることに喜びを感じるんだろう……僕の時もそうだったし。前世は末っ子だったの?

 なんて、まさかね……

「ここではなんだし、屋敷に行きましょうか!」
「はい!」

 いや、なんで初対面の2人が話を進めてるのさ?
 ちょっと! 僕を置いて仲良さそうに馬車に乗り込まないでよっ。

 あたふたとジェスターに別れを告げ、僕は2人を急いで追いかける。

 なんだろう、また厄介ごとが増えそうな気がしてならないんだけど!
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