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王宮で……
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しおりを挟む「ミカエルよ……いずれ、クラリス嬢はアルベルトと結婚する。余の命じゃからな」
「それは!」
とっさに顔を上げ、反論をしようとしたが、口をつぐみ、唇を噛む。
反論の余地がない……正にその通りなのだから。
「余としては、ぜひとも、クラリス嬢を王家に迎え入れたい……アルベルトもクラリス嬢にべた惚れで、あれこれ手を回しているみたいだしの」
知ってらっしゃったのか……アルベルトが裏でいろいろ潰しているのも、黙認されているんだな。
国王様は全てわかっている……こんな状況から覆せるのか?
王命を取り下げてもらえる台詞なんかあるのか?
今のままだとアルベルトと結婚……
想像しただけで、胸がドクンッと跳ね上がり、のたうち回りたくなるほどの苦しさに苛まれる。
その苦しさが現実になり、未来の僕を襲うのかと思うと、今の状況なんて……微々たる事、大したことない。
僕は深呼吸を1回した。
効果的な言葉なんて思いつかない。
でも、ここで引き下がるわけにはいかない。
グッと顔を上げ、国王様の瞳……タンザ王家の象徴ともいえる、アルベルトと同じブラウンの瞳をじっと見据え、覚悟を決めた。
「国王様、婚約はいずれ破棄させます。義姉が王子に恋をしてない以上、王子といえど渡しません」
「ほぅ……王命に逆らうとな?」
「はい。いざとなれば」
畏れ多くも国王様の目の前で、婚約を破棄させると宣言した事は、すでに王命に逆らったと同義になり、良くて不敬罪、最悪、反逆罪にあたるだろう。
それでも、僕は引かない。
ここでアルベルトとの結婚を認めたら、僕は義姉さまを諦めなくてはいけない。
それだけは、絶対にダメだ。
どんな罪に問われても、自ら、義姉さまを諦める道を選ぶなんて事は絶対にするもんか。
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