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閑話 王宮魔道士長の多忙な日常……但し、妹優先(シスコンともいう) 〜ザラ視点〜

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「レイモンド、早く、仕事に戻りなさい」
「お仕事、お疲れ様です。お引き止めしてすみません」
「いえ……お会いできて……」
「レ・イ・モ・ン・ド」

 僕が語気を強め、レイモンドをめつけると、身の危険を感じたのか、ビクッと肩を震わせ、そそくさと執務室から出ていった。

 あの真面目なレイモンドまで意識させるとは……さすが天然人誑ひとたらし。
 本当に前世から変わらないな、美咲あいつは。
 我が妹ながら、その才能が恐ろしい……

 書類の山を魔法で消し去り、紅茶を淹れながら、クラリスに座るよう促す。

「美咲、今日はどうした?」

 僕が前世の名前で呼ぶと、受け取った紅茶をコクンと一口飲み、嬉しそうに僕を見た。

「雪兄にお願いがあってきたの!」
「ふぅん……なに?」
「あのねー」

 美咲は、僕への頼み事の内容を話し始める。

 一生懸命、説明している姿にまだまだ子供だなぁと美咲の頭に手を乗せると、美咲はニコッと笑顔になり、僕を見上げた。

「でね、お願いできないかなーって」
「いいよ」
「やったぁ! 雪兄、大好き!」

 ぱぁぁと顔を輝かせ、ガバッと僕に抱きつき「テヘヘ」と笑う美咲。

 美咲は子供の時からそうだった。

 嬉しい事があると、僕や兄さんに抱きついて満面の笑みを見せる。
 幼い声で「雪にいにい、大好きー」なんて言われた日には、顔が緩みっぱなしだ。

 かわいくてたまらない僕の妹。

 天然人誑ひとたらし。

 僕と兄さんは前世の時からそう呼んでいるが、多分、1番たらし込まれているのは、僕達兄弟かもしれない。

「落ち着いて。ほんっと美咲はお兄ちゃんっ子」

 そう言いながらも、口元が笑ってしまう。

 やっぱり、妹は世界一かわいい。
 そんじゃそこらの男には、絶対嫁には出さない。


 僕は改めて思った。

 あの諦めの悪い三馬鹿トリオは、今度、こんがり炙っておこう……と。
 
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