1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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仕事で……

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 太陽が主役の季節になってきた。
 王都の気候は湿気が少なく、カラッとした暑さなのは悪くはない。けれど、太陽の照りつけが1番厳しい季節。

 僕は眩しい光に目を細め、手をおでこの上にかざす。

 太陽神テダを崇めている王族は、この時期の3日間、テダ神に祈りを捧げる神事しんじがあり、その日程に合わせ、学園は3日間休みとなる。

 この休みを使い、僕は義父さまと少し王都から離れた領地の視察に出かけていた。

「ミカエル、どうだった?」
「そうですね。豊かな土地なので、もう少し流通がスムーズに行けば、領民達ももっと潤った生活ができると思いますが……今後の課題です」

 帰りの馬車の中で義父さまに質問され、僕は感じた事を正直に答える。

 農作物も海産物も豊かな土地なのに、交通が整ってないのは勿体ない。
 道も整備すれば、より新鮮なものを王都に届けられるのではないか……まぁ、来期の予算に組み込んでも、完璧に整うまで2、3年ってところかな。

「あと、鉱山で働く人達に少し休み……例えば、子供の誕生日とか……そういう時にも休んでもらい、家族と過ごす時間を増やした方が良いと思います。鉱山で働くのは重労働ですし。試算を出しましたが、気持ち給料をあげても大丈夫かと。条件を良くすれば人も集まります。やはり、最後は人ですから。それで仕事の効率があがるのなら安いものです」

 僕の意見を聞き、義父さまは満足そうに何度も頷いた。

「そうだね。まずは、できるところから手配をしていこう……ミカエルの意見をまとめておいてくれ。ああ、もう王都に入ったのか。初めての視察でミカエルも疲れただろう。今日はゆっくり休みなさい」
「はい、ありがとうございます」
 
 義父さまに渡す書類を整理していると、アルフォント家の屋敷が見えてきて、久しぶりに帰ってきた安堵感に包まれる。

 僕は大事に手元に置いてあったお菓子を眺めた。

 視察先の町で見つけたマドレーヌがとても美味しく、義姉さまにどうしても食べさせてあげたくて、今朝、現地を出発する前に急いで買いに行ったんだ。

 早くこのマドレーヌで一緒にお茶がしたいな。
 義姉さまと3日間も離れた事がなかったから、落ち着かないよ。

 やっと義姉さまに会える嬉しさでフフッと僕は顔を綻ばせる。
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