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クラリスの心配 〜クラリス視点〜

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 屋敷に着き、先に馬車を降りた私とジェスター様はミカエルがなかなか降りてこない事が心配になってしまう。

 もう一度、馬車に乗り込み、ミカエルを呼ぶと「だ、大丈夫。ごめん、すぐ降りるね」と言いながら、素っ気なくプイッと顔を背けられてしまった。

 え……いつもなら微笑んでくれるのに……

 なんだかズキッと胸が痛み、せっかく完成したハンカチは渡せずじまいで、部屋に戻ってしまい、今に至る。

 なんだか、ミカエルの様子が変だ。

 プレゼントを渡す口実で、様子を見に行って見ようかな。
 さっき、顔を背けたのだって、声を掛けたタイミングが悪かっただけかもしれないしね。

 私はスクッと立ち上がり、きれいにラッピングした袋を片手に部屋を出た。


「あ、今、人払いしてて……お茶、飲む?」
「ありがと。大丈夫よ。ミカエル、昨日、今日、楽しかったわね」

 ミカエルの部屋に行くと寝ていたのか、少し髪が乱れていて、またも自分のタイミングの悪さに「あちゃー」と少し落ち込みながら、笑顔は崩さず、ミカエルを盗み見た。

 迷惑そうではなさそう……かな。

「うん、楽しかったね」
「ふふ、また、行きましょ。それでね、あのね……これ……」

 私はハンカチが入った袋をミカエルに差し出す。

 いやーあの下手っぴ。いざ、渡すとなると恥ずかしいなぁ。

「僕に? なに?」
「あのね……リボンのお礼……」
「ありがとう。じゃあ、一緒にお茶して食べよっか」

 ミカエルは、にっこりと極上の笑顔で受け取ってくれた。が、同時にお茶の誘いを受け、ドキリとする。

 あ……やっぱり、お菓子の方が良かったかな。
 こんな下手くそな刺繍のハンカチより、お菓子だよね……でも、もう、ミカエルの手に渡しちゃったよ。

 ど、どうしよう……やっぱり、あーげないって取り返そうかな……って、それじゃあ、ただの嫌なヤツじゃん!
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