1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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スプリングティーパーティーで……

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「ミカエル? ねぇってば」

 僕の名を呼ぶ声で我に返り、慌てて義姉さまの顔を見る。
 
 少し心配しているような……困っているような……そんな表情の義姉さまは、何か言いたげな様子だった。

「あ、なに? 義姉さま」

 なんとなくポケットに手を突っ込み、渡せなかったリボンを軽く握る。
 あんなにきれいに包まれていた袋は、いろいろな騒ぎの中、ボロボロになり……もう、渡せないや……

 悔しい……義姉さまの事を想いながら、一生懸命、選んだのに。

「あのね、ミカエル、私に話があるんじゃないかなぁって……」

 義姉さまは、ちょっと目線を落としながらポソリと言ったかと思うと、バッと顔を上げ、早口で話を続ける。
 
「か、勘違いかもしれないけど。エドワード様がいらした時、様子が変だったし。あれから元気ないし……ごめん、勘違いだったら、ごめんね」
「あ、うん……」

 恋愛は超超鈍感なのに、人の事はよく見てるや……
 
 僕はクスッと笑いながら、ポケットのリボンを取り出した。

「ボロボロになっちゃったけど」

 義姉さまの前で袋を開け、コバルトブルーのリボンを出す。

「わっ! きれい……」
「はい。プレゼント」

 義姉さまの右手を取り、きゅっとリボンを握らせる。
 いきなり僕がリボンを贈った事に戸惑っているのか、義姉さまは黙ってリボンを見つめていた。

「ローザ嬢とリーズル嬢からも貰っていたから、いらないかもしれないけど」

 僕は視線を外して、ポツリポツリ話す。
 
「邪魔になるもんじゃないと思うし……」
「ありがとう! ミカエル」

 義姉さまは弾んだ声を出し、僕のリボンを眺めては「きれいなブルーね……」とふふっと嬉しそうに微笑んでいた。

 ブラウンの長い髪をサイドに寄せ、サッと髪をリボンで結ぶ。

「どうかしら?」

 まさか、すぐに使ってくれるとは思わず、僕は義姉さまの事をじっと見てしまった。

「えっと……似合わない……?」

 上目遣いに僕を見る義姉さまが、かわいらしく、僕は、かぁぁと赤くなる。

「ううん……そんな事ないよ。似合うし……その色、選んで良かった」
「へへっ、ありがとう、ミカエル。大事にするね」
「う、うん」

 僕は赤くなった顔をふいっと背け、再び窓から景色を眺めるふりをする。

 義姉さまのブルー瞳に合わせたリボン……とても似合ってる。

 ……まじないは失敗したけど……なんだか、嬉しい。
 義姉さまの笑顔が……本当に嬉しい。
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