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エドワードとザラと……〜クラリス視点〜
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「本当の……姉弟じゃないんだよな?」
「たしか、資料にAクラス魔道士だと。魔力はないと思われていたが、実は結構高い魔力持ち……」
雪兄が右手の人差し指を軽く一振りすると、別室の資料室からカタカタと音がして、パッと左手に資料が現れる。
「う、うん……そうだけど?」
私はお兄ちゃん達の意図が読めず、首を傾げた。
「まぁ、僕の勘に間違いなければ……」
「……だろうなぁぁ」
小さな溜息と共に「本当に前世から変わらないな」と呆れ声がボソリと聞こえる。
「へ?」
「いや、なんでもない。今度、ミカエル君、連れてきなさい」
「えっ? いいの?」
「美咲の弟は俺達の弟と同じだからな」
お兄ちゃんの台詞に驚き、目を見開く。
美咲の弟は俺達の弟と同じだから……
じんと胸が熱くなった。
大好きなお兄ちゃん達が大好きな義弟を認めてくれてる……
「ありがと……ずっとね、ミカエルを紹介したかったの!」
私は感動で泣きそうになるのを堪えながら、ギュッとお兄ちゃん達に抱きつくと、2人は柔らかな微笑みを浮かべ、私の頭をヨシヨシと撫でてくれる。
「相変わらず、甘えっ子だな」
「美咲はお兄ちゃんっ子だからな」
「もぉ! 子供扱いして!」
天兄と雪兄は私のクレームに苦笑し、頭をポンポンと軽く叩く。
「はいはい。美咲はそのままでいいから。そろそろ時間じゃないのか?」
雪兄が時計を指差し、思っていたよりも時間が進んでいる事に驚き、慌てて、帰る準備を始めた。
「うん、そろそろ帰らなきゃ。今度、ミカエルと一緒にくるね」
私が満面の笑みをむけると、お兄ちゃん達は頷きながら「楽しみにしてるよ」と微笑み返してくれる。
「気をつけて帰れよ」
「はい!」
元気よく返事をして、鼻歌を歌いながら執務室を出た時、天兄と雪兄の溜息まじりの声が微かに聞こえた。
「この世界でも……なんだな」
「ああ、天然人誑し炸裂だ」
「鈍感も健在だな……」
「まぁ、そこがかわいいからね」
「そうだな」
何の話してるのかな?
人誑しってなんだろ? 人攫いの仲間かな?
人攫いが鈍感なの? よくわからない。
仕事の話かな?
ふふふっ、それにしても、今度はミカエルと一緒に来れるなんて嬉しいなぁ。
いつにしようかな?
天兄と雪兄の予定も聞いて、ミカエルにも聞かなきゃね。
私は、その日の事を考え、楽しみな気持ちが抑えきれず、軽やかな足取りで帰りの馬車にむかった。
「たしか、資料にAクラス魔道士だと。魔力はないと思われていたが、実は結構高い魔力持ち……」
雪兄が右手の人差し指を軽く一振りすると、別室の資料室からカタカタと音がして、パッと左手に資料が現れる。
「う、うん……そうだけど?」
私はお兄ちゃん達の意図が読めず、首を傾げた。
「まぁ、僕の勘に間違いなければ……」
「……だろうなぁぁ」
小さな溜息と共に「本当に前世から変わらないな」と呆れ声がボソリと聞こえる。
「へ?」
「いや、なんでもない。今度、ミカエル君、連れてきなさい」
「えっ? いいの?」
「美咲の弟は俺達の弟と同じだからな」
お兄ちゃんの台詞に驚き、目を見開く。
美咲の弟は俺達の弟と同じだから……
じんと胸が熱くなった。
大好きなお兄ちゃん達が大好きな義弟を認めてくれてる……
「ありがと……ずっとね、ミカエルを紹介したかったの!」
私は感動で泣きそうになるのを堪えながら、ギュッとお兄ちゃん達に抱きつくと、2人は柔らかな微笑みを浮かべ、私の頭をヨシヨシと撫でてくれる。
「相変わらず、甘えっ子だな」
「美咲はお兄ちゃんっ子だからな」
「もぉ! 子供扱いして!」
天兄と雪兄は私のクレームに苦笑し、頭をポンポンと軽く叩く。
「はいはい。美咲はそのままでいいから。そろそろ時間じゃないのか?」
雪兄が時計を指差し、思っていたよりも時間が進んでいる事に驚き、慌てて、帰る準備を始めた。
「うん、そろそろ帰らなきゃ。今度、ミカエルと一緒にくるね」
私が満面の笑みをむけると、お兄ちゃん達は頷きながら「楽しみにしてるよ」と微笑み返してくれる。
「気をつけて帰れよ」
「はい!」
元気よく返事をして、鼻歌を歌いながら執務室を出た時、天兄と雪兄の溜息まじりの声が微かに聞こえた。
「この世界でも……なんだな」
「ああ、天然人誑し炸裂だ」
「鈍感も健在だな……」
「まぁ、そこがかわいいからね」
「そうだな」
何の話してるのかな?
人誑しってなんだろ? 人攫いの仲間かな?
人攫いが鈍感なの? よくわからない。
仕事の話かな?
ふふふっ、それにしても、今度はミカエルと一緒に来れるなんて嬉しいなぁ。
いつにしようかな?
天兄と雪兄の予定も聞いて、ミカエルにも聞かなきゃね。
私は、その日の事を考え、楽しみな気持ちが抑えきれず、軽やかな足取りで帰りの馬車にむかった。
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