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エドワードとザラと……〜クラリス視点〜

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 ……2人がやきもきしてるのは、わかる。

 でもねぇ……私とアルベルト様は破棄する気満々なのに、なぜかスムーズにいかないのよねー。
 なーんで、こんなにうまくいかないんだろ?
 政治的な何か……って訳でもなさそうなのになぁ。
 
 誰かに邪魔されてるとか? 
 そんな、まさかね。
 私達の婚約破棄を邪魔して、得する人間がいるとは思えないし……

 私が思案に暮れていると、いつの間にか両隣に来ていたエドワード様とザラ様が私の顔をヒョイっと覗き込む。

「俺が話をつけてやろうか?」
「僕が王子に話そうか?」

 2人の申し出に、ぎこちない笑顔を見せる私。

 いやいやいや……この2人が出てきたら、穏便に済むわけ無いでしょう……婚約破棄に動きがなくて、イライラしているんだから余計に!

 なんていっても、我が国攻防のツートップ。
 2人のお陰で国が平和といっても過言ではない。
 そんな2人が暴れたら……マジ、やばい。
 クーデターに発展し、私の婚約案件が王家存続の危機に……いや、ホント、冗談じゃなく。

「ちゃんとする。ちゃんとするから。それに、アルベルト様は破棄したいと思っておられるから、言っても無駄だと思うよ?」

 私が返事をした途端、2人はお互いの目を合わせ「まじかよ……」とつぶやきながら、特大の溜息を同時についた。

「お前、前世から変わらないなぁ」
「まぁ、そこがかわいいところでもあるんだけどね」

 エドワード様とザラ様が、しょうがないなぁと諦め顔で話すけど……えっ? なによぉ。私、変なこと言ったぁ?

「とりあえず、アルベルト王子が言うこと聞かない時は、俺に言えよ」
「そうだよ、美咲。燃やしてあげるから」

 ちょっと、ちょっと、我が国の王子を燃やしちゃだめーー!

「変な男がいたら言えよ」
「美咲はかわいい妹なんだから」
「ギタギタにしてやる」
「雷、落としても良いし」
「とりあえず、半殺しにするか」
「まぁ、火炙りは絶対だね」
「やめてーーーー! 物騒だからっ! お兄ちゃん達、物騒だから!」

 過保護すぎる……どころか、物々ものものしさ満点の台詞に、私は口を尖らせる。

 やだぁぁぁ、私、結婚どころか、彼氏すらできないじゃん!

 むぅと膨れていた私の頭にふわりと手をのせて「何かあったら言うんだぞ?」と何度も言いながら、2人は優しく私の頭を撫で続け、怒るに怒れなくなってしまった私は、ついついクスリと笑ってしまった。

 もお! 
 前世の時から変わらないなぁ、このシスコンっぷり。




 エドワード様、ザラ様、私は、前世の記憶がある。
 私達はこの世界とは違う世界……日本と呼ばれていた場所で。


 とてもとても仲の良い兄妹だった。
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