1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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エドワードとザラと……〜クラリス視点〜

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 ――3年前、クラリスの事情――


「ザラ様、クラリスです」

 私は、王宮魔道士長ザラ様の執務室の扉を叩いた。

「どうぞ」

 室内からザラ様の返事が聞こえたので、扉を開ける。

 いつ来ても、両壁面に並んだ難しそうな本に圧倒されてしまう。
 正面には、相変わらず忙しそうに仕事をしている銀髪の王宮魔道士長ザラ・ブライトン様。

「ザラ様、私に話ってなんでしょうか?」

 ザラ様は仕事の手を止め、感嘆の声が思わず漏れてしまうほどの美しい顔を上げ、私を見た。

「ああ、クラリス。貴女の魔法の鍛錬は、私がみることになりました」
「へっ?」
「聞こえなかったのですか?」
「聞こえてます……違う! 違う! なんで雪兄ゆきにいが私の鍛錬受け持つの?」
「まぁ、お前はSSクラス魔道士だし、僕のそばにいた方がいろいろと安全だしね」
「安全って……だって、王宮魔道士長が直接鍛錬するって、特別なんだよ? 王族とシトリン家だけの特権でしょう?」
「あんなもの。なんとでもなる」

 ザラ様は書類にサインをしながら、しゃらっと言い放つと、パチンと指を鳴らし、目の前の書類の山を消した。

 これは……裏で手を回したな……

「入るぞ!」
「兄さん……ノックぐらいしてよ」

 勢いよく扉が開き、ザラ様の兄上、エドワード・ブライトン様が入ってきた。
 私を見て「おっ、早かったな」と懐っこい顔で笑いかける。

天兄てんにいは休憩?」
「ま、そんなとこ」

 私がニコニコ話しかけると、エドワード様はニカッと笑う。

 ザラ様は「僕の執務室は休憩所じゃないんだけど」と抗議の声を上げるが「ま、いーじゃねーの」と適当に受け流されている。

 そんな2人のやり取りを懐かしい気持ちで見ていた私に、ザラ様は少し間を置いた後、不機嫌そうに話を振った。

「アルベルト王子との婚約破棄、全然、進んでないじゃないか……」

 不満そうなエドワード様とザラ様の視線が私に集中しているのに耐えきれず、私は明後日あさっての方向を向いて、うーんと唸ってしまう。
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