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強敵が……
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――3年前――
「ミカエル!」
朝食が終わった後、先にダイニングルームを出た僕を呼び止める声がし、振り返ると、息を切らせた義姉さまが僕の袖を掴んでいた。
「もう! 歩くの速いよ!」
「あ、ごめん……」
義父さまに渡された書類の確認を早く終わらせたくて、無意識に足早に歩いていたらしい。
「今日、時間あるかな?」
「時間? 午後からなら……」
今日中にやらなければならない事を思い浮かべ、返事をすると、義姉さまは声を弾ませた。
「一緒に王宮に行かない?」
「王宮?」
想定外の誘いについ怪訝な声が出てしまう、僕。
王宮? なぜ? なにをしに? アルベルトのところ?
もちろん一緒に行くけどさ。
王宮と聞いたら、思いつく人物はアルベルトしかいない。
僕はアルベルトの膝枕事件を思い出す。
先日、魔力制御装置が完成したとの連絡が入り、義姉さまは、あのお茶会の翌日に王宮魔道士長であるザラ様の元へむかった。
ザラ様の教え子であるアルベルトとジェスターが、とても厳しく恐ろしい方だ、と渋い顔をするのを見て、あの義姉さまが顔を曇らせる。
心配になった僕は「一緒に行こうか?」と声をかけたが、大丈夫だという義姉さまの言葉を信じ、気掛かりではあったものの、その日の予定をこなしていた。
今、思うと、あの時、一緒に行かなかったのが悔やまれてならない……
時間が経っても、なかなか帰ってこない義姉さまが気になり、急いで王宮に行くと、義姉さまが……
中庭で!
アルベルトに!
膝枕する寸前で!
いや、もう本当に、どこをどうしたら、アルベルトに膝枕することになるのさっ!
目の前の状況が想像の斜め上すぎて、びっくりなんだけどっ!!
義姉さま曰く。
「最近、眠れてないって、おっしゃっていたので、少しでも寝てもらおうと……」
はぁぁぁぁ?
だからって、義姉さまが膝枕する必要がどこにあるのっっ!!
んなもん、1人で寝かしときゃいいでしょ!
「アルベルト様、枕がないと眠れないらしくて……」
はぁぁぁぁ?
あいつがそんなに繊細なわけないでしょ!
鈍感な義姉さまを誘導して、膝枕で寝ようとしていたアルベルトが1番悪い。
同時刻に駆けつけていたジェスターも大激怒で、とりあえず、レンガ渡して「それ、枕にして寝てろっ」って、アルベルトを置いてきたけど!
けど……
あの日以来、義姉さまは、よく出かけるようになった……
もしかして……
考えたくもない、嫌な想像が脳裏をよぎる。
義姉さまが1人で出かけていたのは、アルベルトに会っていた?
僕の知らない間に2人の仲は進んでいた?
膝枕は……恋仲だった……から?
嘘……だよね……?
「そう、王宮。アルベルト様とジェスター様には、ないしょね」
義姉さまは悪戯っぽく笑い、唇の前で人差し指を立てるのを見て、いつの間にか緊張で体が強張っていた僕は、肩の力が抜け、安堵の息を吐く。
ないしょ?
じゃあ、アルベルトのところに行っていたわけじゃないんだ……
ああ、良かった…
「いいよ。何しに?」
「ザラ様とね、エドワード様がミカエルに会いたいんだって!」
ザラ様とエドワード様?
これまた予想外の名前が出てきたな……
王宮魔導士長と王宮騎士トップの方だよね……
いつの間に義姉さまは、そんな大物と交流していたんだろう?
……でも、まぁ、アルベルトと恋仲じゃなくて良かった。
この時は、本当に心の底からホッとしていたんだ。
親友達より強敵がいるなんて、知る由もなかったから。
「ミカエル!」
朝食が終わった後、先にダイニングルームを出た僕を呼び止める声がし、振り返ると、息を切らせた義姉さまが僕の袖を掴んでいた。
「もう! 歩くの速いよ!」
「あ、ごめん……」
義父さまに渡された書類の確認を早く終わらせたくて、無意識に足早に歩いていたらしい。
「今日、時間あるかな?」
「時間? 午後からなら……」
今日中にやらなければならない事を思い浮かべ、返事をすると、義姉さまは声を弾ませた。
「一緒に王宮に行かない?」
「王宮?」
想定外の誘いについ怪訝な声が出てしまう、僕。
王宮? なぜ? なにをしに? アルベルトのところ?
もちろん一緒に行くけどさ。
王宮と聞いたら、思いつく人物はアルベルトしかいない。
僕はアルベルトの膝枕事件を思い出す。
先日、魔力制御装置が完成したとの連絡が入り、義姉さまは、あのお茶会の翌日に王宮魔道士長であるザラ様の元へむかった。
ザラ様の教え子であるアルベルトとジェスターが、とても厳しく恐ろしい方だ、と渋い顔をするのを見て、あの義姉さまが顔を曇らせる。
心配になった僕は「一緒に行こうか?」と声をかけたが、大丈夫だという義姉さまの言葉を信じ、気掛かりではあったものの、その日の予定をこなしていた。
今、思うと、あの時、一緒に行かなかったのが悔やまれてならない……
時間が経っても、なかなか帰ってこない義姉さまが気になり、急いで王宮に行くと、義姉さまが……
中庭で!
アルベルトに!
膝枕する寸前で!
いや、もう本当に、どこをどうしたら、アルベルトに膝枕することになるのさっ!
目の前の状況が想像の斜め上すぎて、びっくりなんだけどっ!!
義姉さま曰く。
「最近、眠れてないって、おっしゃっていたので、少しでも寝てもらおうと……」
はぁぁぁぁ?
だからって、義姉さまが膝枕する必要がどこにあるのっっ!!
んなもん、1人で寝かしときゃいいでしょ!
「アルベルト様、枕がないと眠れないらしくて……」
はぁぁぁぁ?
あいつがそんなに繊細なわけないでしょ!
鈍感な義姉さまを誘導して、膝枕で寝ようとしていたアルベルトが1番悪い。
同時刻に駆けつけていたジェスターも大激怒で、とりあえず、レンガ渡して「それ、枕にして寝てろっ」って、アルベルトを置いてきたけど!
けど……
あの日以来、義姉さまは、よく出かけるようになった……
もしかして……
考えたくもない、嫌な想像が脳裏をよぎる。
義姉さまが1人で出かけていたのは、アルベルトに会っていた?
僕の知らない間に2人の仲は進んでいた?
膝枕は……恋仲だった……から?
嘘……だよね……?
「そう、王宮。アルベルト様とジェスター様には、ないしょね」
義姉さまは悪戯っぽく笑い、唇の前で人差し指を立てるのを見て、いつの間にか緊張で体が強張っていた僕は、肩の力が抜け、安堵の息を吐く。
ないしょ?
じゃあ、アルベルトのところに行っていたわけじゃないんだ……
ああ、良かった…
「いいよ。何しに?」
「ザラ様とね、エドワード様がミカエルに会いたいんだって!」
ザラ様とエドワード様?
これまた予想外の名前が出てきたな……
王宮魔導士長と王宮騎士トップの方だよね……
いつの間に義姉さまは、そんな大物と交流していたんだろう?
……でも、まぁ、アルベルトと恋仲じゃなくて良かった。
この時は、本当に心の底からホッとしていたんだ。
親友達より強敵がいるなんて、知る由もなかったから。
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