上 下
40 / 298
1年ぶりに……

4

しおりを挟む
「ザラ様って、どんなお方ですか?」

 アルベルトも現実に戻り、僕達が他愛のない話をしていた時、ふと思い出したのか、唐突に義姉さまは王宮魔道士長ザラ様の事を質問する。
 直接の教え子でもあるアルベルトとジェスターは、思ってもみなかった人物の名が出てきたせいか、一瞬、黙り込んだ。

 魔力制御装置完成の連絡があり、明日、ザラ様に会いにいくから、義姉さまとしても、少し気になったんだろう。
 ザラ様テストは100点とる自信があるとはいえ(っていうか、そんなテストはそもそも存在しないけど)、人となりを知っておきたかったのだと思う。

 エリック先生信者からの情報は盲目すぎて、一方的だったからなぁ。

「ああ、ザラ先生か……」
「ザラ先生ね……」

 だいたい事情を察した2人の低い声音の言葉が重なった。

「えっ? なに? なに? 変な人なんですか?」
「いや、そんなことは……」
「ないけど……」
 
 アルベルトとジェスターは目を交わしながら、言いよどみ、一呼吸置いて、同時に叫んだ。

「あの人は悪魔だっ!」
 
 思いがけぬ言葉を聞いたせいか、義姉さまは戸惑いを隠せない。
 僕も、そのものものしい言葉に驚く。

 悪魔……?

「今、思い出しても……実技なんて、無表情で谷から落とされたもんな」
 
 アルベルトがつぶやと、ジェスターは横でウンウンと深く何度も頷く。

「川にも落とされたな、そう言えば」
「あれはきつい……」
「氷漬けにもされそうになったし」
 
 アルベルトとジェスターは溜息を漏らす。

「なに? それ?」
「ザラ先生の授業だけど?」
「!?」

 義姉さまは目をまん丸くし、声も出なかったようで……しばらくして、出た台詞は少し不安げなものだった。

「そ、そうなんですね。明日、私、大丈夫かな?」

 僕も義姉さまも、直接、お会いした事がないし、ザラ様が悪魔って、初耳だけど、教え子の2人が口を揃えて言うなんて……心配だ。
 
 明日、義姉さま、大丈夫かな……
しおりを挟む

処理中です...