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1年ぶりに……

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 そんな毎日を経て、昨日でやっと義姉さまの必須項目が終わった。
 なんと、1年かかったのだ。
 僕の12倍、時間がかかるって……どれだけ布教活動してたんだろう……

「明後日、ザラ様とお会いするとは羨ましい! くれぐれも粗相のないように!」

 義姉さまに何度も念押しして去っていった、エリック先生。これが全授業を終わらせた教え子へのはなむけの言葉である。

「エリック先生、ブレないわぁ」 

 僕の隣で義姉さまは可笑しそうにクスクス笑いながら、エリック先生を見送った。


「あーー、あおーーい」

 抜けるような青空を見上げながら「んー」と大きく伸びをした義姉さまは、久々にのんびりした時間を楽しんでいる。

 今、僕達は中庭でお茶会をしていた。
 勉強終了のお祝いと、まめに義姉さまに差し入れをしていたアルベルトとジェスターにお礼を兼ねて、2人を招待し……ま、いつもと変わらないメンバーなんだけど。

 義姉さまが勉強している間、遊びに来るのを控えていた2人は、どことなく嬉しそうにソワソワと席に着いていた。

「義姉さま、忙しかったもんね」
「ミカエルもいろいろサポートしてくれて、ありがとう。助かったわ」
「義姉さまの為なら、なんでもするよ」

 ニコリと笑う僕に、義姉さまは目を合わせて「ミカエルったら優しいね」とふふっと笑う。

「クラリス、お疲れ様」

 ジェスターが僕と義姉さまの時を邪魔すべく、穏やかな微笑みとともに声をかける。
 もともと大人びてはいたけれど、この1年で更に大人な感じに……。知的で落ち着いた雰囲気が増した気がする。
 実際、とても優秀な人物ではあるのだけど。

「ジェスター様、いろいろ差し入れありがとうございました。とても元気がでて、頑張れましたわ」

 ジェスターは花や紅茶やチョコレートなど、僕がいない時を見計らって贈ってきていた。

 なんで、僕がいない時を把握しているのか謎なんだけど、気の利かせ方やタイミングが超一流。
 さすがというか、なんというか……シトリン侯爵家跡取り、憎たらしいけど、ソツがないのは脱帽する。
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