上 下
35 / 298
勉強は……

2

しおりを挟む
 強い魔道士は国の宝であると同時に脅威でもある諸刃の剣。
 それゆえ、法律で魔力制御装置の着用が義務付けられている。多少魔力を制御した方が、国及び本人にも都合がいい。 

 それに……

 僕は義姉さまをチラリと見た。

 魔力を制限することで、人攫ひとさらいから狙われにくくなる。
 人権無視の小国では人身売買が横行していて、強い魔道士は闇オークションで高値がつくらしい。
 幸い、我が国では代々の王宮魔道士長が優秀で、そのような被害は今まで出ていないのだけれど。

「それでね、魔力制御装置の制作、王宮魔導士長のザラ様に申請を出したのだけど、とてもお忙しい方でだいぶ先になりそうなの」
「そうなんだ。早くできるといいね……で、さ。不思議なんだけど……3ヶ月で魔道士ランクの勉強なの?」

 あまりにも、あまりにも、遅い。
 最初は、SSクラスだから、人一倍しっかりみっちり勉強しているのかな? なんて、思っていたけど……魔導師ランクの話なんて基礎の基礎、3日目には勉強することだよ?

「う……ん……ねぇ、ミカエルは勉強、どれくらいで終わったんだっけ……」

 しゅんと肩を落とし、上目遣いで僕に聞く姿が心配で、僕は口ごもってしまう。

「1ヶ月……かな……」
「1ヶ月!? なんで、私、3ヶ月かかってるのぉ!?」

 3ヶ月かかって、魔道士ランクだから……まだまだ先は長いよ、義姉さま。

「うーん……魔力量が多いから?」
「ワタシ、マリョク、イラナイ」

 義姉さまは遠くを見つめながら、無感情に言葉を発する。そんな義姉さまを見て、僕は苦笑する。

「なに言ってるの……あとは、先生の性格じゃない?」
「そ、それ!!」
「エリック先生、話、長そうだもんね」
「う……ん、ほとんど布教活動してるからね」

 義姉さまは、再び遠くを見つめ、つぶやく。

 布教活動ってなに? どういうこと?
しおりを挟む

処理中です...