上 下
32 / 298
婚約者が……

3

しおりを挟む
 義姉さまの鈍感さは、置いておくとしても。

 アルベルトが反省してても許さないし、そもそも、反省なんかしているわけない。
 僕らが激怒しているから、じゃあ、クラリスのこと諦めます。なんて言うような奴だったら、とっくの昔に恋敵ライバルなんかじゃなくなってる。
 アルベルトもジェスターと同じくらい、諦めが悪い男だから。

「座れば?」

 なんとなく居心地悪そうに、そわそわしているアルベルトにぶっきらぼうに話しかける。
 そんなところでウロウロされては落ち着かない。

 アルベルトは空いている椅子に座ると、緊張していたのか、出された紅茶をクイッと勢いよく飲んだ。

「アルベルト様、あの、婚約の件ですけど……」
「ああ……」

 落ち着いたのを見計らい、義姉さまが口火を切ると、アルベルトは覚悟を決めた顔になり、僕とジェスターは背筋を伸ばす。

「なぜ、婚約の話になったのかご存知ですか?」

 この質問にアルベルトは「へっ?」と素っ頓狂すっとんきょうな声を出し、当惑の色を見せた。

 まぁ、だよね。
 身分の高い令嬢、ましてや、魔力が強い魔道士ともなれば、王家との婚約を考えるのは自然の流れ。
 普通の令嬢ならば、婚約の話が上がるのは当然と受け止めるはず。
 だから、こんな初歩的な質問をされるとは思ってなかったんだろう。

 でも、義姉さまは、残念ながら普通じゃなかったんだよなぁ。
 だって、アルベルトとの婚約……


 


 僕はほくそ笑んだ。

 さぁ、どうする? アルベルト。
しおりを挟む

処理中です...