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婚約者が……

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「お通しして」

 んーと言いながらも普通に返事をするものだから、驚く僕達に「ちょうどいいわ。お散歩の計画もたてましょ」とにっこりする。

「えっ!? いいの?」
「無理に会わなくても……」

 あまりに普段と変わらない反応すぎて、逆に僕達の方が慌ててしまう。

「まぁ、婚約の話は、すっっごくびっくりしたけど、せっかく来てくださったんだもの。追い返すわけにはいかないでしょ? それに……アルベルト様だって婚約は望んでいないはずよ」
「えっ? そんなのわからないじゃん」
「なんで望んでないと思う?」

 僕達の質問に、きょとんとする義姉さま。

「えっ? 何、言ってるんですか? 婚約相手は『わたし』ですよ???」

 …………
 …………

 僕とジェスターは、義姉さまのあまりといえばあまりの返答に揃って二の句が継げなくなってしまった。

 アルベルトが義姉さまに好意を持ってる……なんて、微塵も思ってないんだ……哀れ、アルベルト。

 もちろん、僕にとっては喜ばしい事なんだけど……なんだけどさ、自分に置き換えると、とてつもなく胸が痛すぎる。
 だって、婚約というハッキリした意思表示でも、気持ちに気づいて貰えないんだよ?
 それってさぁ……どうすりゃいいんだろ……

 横を見ると、ジェスターも同じ考えに至ったようで……

「まったく理由になってないから」
「これは……駄目だ……」
「鈍感も……ここまでくると」
「いや、もう……ほんとにさ……」

 義姉さまが、アルベルトのお茶の準備に気を取られているのをいい事に、僕達2人は顔を見合わせ、ぼやき続けた。
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