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お見舞いに……

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 さすがのジェスターも、あまりに予想外の反応に面食らった表情を見せた。

「義姉さま。大丈夫?」
「クラリス、大丈夫か?」

 テーブルに突っ伏したまま、動かなくなった義姉さまを心配して、声をかけるも、ピクリとも動かず、僕とジェスターは顔を見合わせる。

『忘れてたね、これ』
『だな』

 目で会話を交わし、再度、溜息をつく。

 ……アルベルト。
 お前との婚約、なんとも思ってないどころか、忘れられてたけど? 

 なんか……恋敵ライバルとはいえ、少しだけ同情するな。
 
 突っ伏したまま義姉さまは、近くにあったチョコレートにモゾモゾと手を伸ばし、自分の口の中に放り込む。

「よしっ、糖分補給! 大丈夫よ!」

 ガバッと勢いよく上半身を起こし、両手を握りしめ、ガッツポーズをすると「うんっ」と頷いた。

 あ、復活した……
 ああ、もういつまでも、誤魔化しきれないな……現実を見なきゃ。

「……義姉さまはさ……婚約の事……どう思ってるの?」

 アルベルトと婚約できて嬉しい……と言われるんじゃないかという恐怖心が邪魔して、聞くに聞けなかった事を勇気を出して口にした。
 緊張の為か、少し声がかすれてしまう。

「うーん、そうだなぁぁ」とポツリと声を漏らすと、義姉さまは斜め上を見つめ、思案に暮れているようだった。

 婚約という事柄を考えている時点で、義姉さまにアルベルトは男と認識されている……その事実に気づき、僕は下唇を噛む。

「できれば……」

 義姉さまが口を開きかけた時、侍女のセリナが他のメイドに耳打ちをされ、慌てて僕達の話に割り込んでくる。

「お話中、失礼いたします。クラリス様、アルベルト王子様がいらっしゃいました」

 王子の来訪だ。
 主人の話を遮ってでも、報告すべき事である。

 そして、僕達3人が一斉にセリナを凝視してしまったのは言うまでもない。


 まさに、噂をすれば影がさす。
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