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お見舞いに……

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 僕は読んでいた本を閉じて、時計を見た。
 まだジェスターは来ない。

 あの後、ジェスターに返事を書き、姉さまの部屋に行こうかと思ったけれど、足を止め、思い直した。

 義姉さま、着替え中かもしれないしな。

 時間ができたので、義父さまに渡された仕事の書類に軽く目を通し、ジェスターが来るまで……と机に置いてあった読みかけの本を手に取る。
 何かしていないと、嫌なことばかり考えてしまうから。

 夢中で読み進め、気がついたら2時間も過ぎていた。

 おかしいな……
 ジェスターだったら、すぐに来そうなものだけど。

 連絡もなくジェスターが遅れてくるわけがない。
 ジェスターは、そういうところもキチンとしている奴だし……ま、アルベルトはテキトーだけど。

 アルベルトか……

 僕はぼーっと本の表紙を見つめながら、思いにふける。


 そもそも、義姉さまとアルベルトがどのように出会い、何があったのかよく知らない。
 義姉さまがアルベルトと初めて会ったであろう、王宮でのお茶会の日に、僕が気がついたら、中庭で2人で話し込んでいた。
 義姉さまに「どうかしたの?」と聞いても「アルベルト様と話していただけよ」とあっけらかんと答えるだけ。
 たぶん、義姉さま的には本当になにもないのだろう。
 でも、僕にはわかった。

 アルベルトは義姉さまに恋してた……

 僕が頭を抱えたのは言うまでもない。


 王族という特権で婚約者という立場を手に入れたアルベルト……

 僕の心はざわつき、息苦しくなる。
 気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をし、両手で自分の頬をペシンと叩く。

 まだ、大丈夫だ。しっかりするんだ。すぐに結婚する訳じゃないんだから。
 それにしても……

 僕は、再度、時計を見る。

 本を閉じてから30分も経ってるんだけど。
 どうしたんだろう……? 

 まさか婚約の件、僕の予想以上にダメージを受けているとか?
 あのジェスターが?
 まぁ……それならそれで、厄介な恋敵ライバルが1人減るから、僕としては願ったりかなったりだけど。

 でも、とりあえず……

 僕は椅子から立ち上がり、部屋を出た。

 ジェスターがまだ来ないって、義姉さまに伝えにいったほうがいいな。

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