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お見舞いに……

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「えっ!? ちょ…………義姉さま!」

 義姉さまの部屋を声を掛けながらノックし、部屋に入ると、上半身を前に屈め、手を床にべったりつけている義姉さまの姿が目に飛び込んできた。

「ミカエル、見て、見て! 手がね、床につくのよ。身体、柔らかくない? すごいでしょー」
「何やってるの! 昨日の今日なんだよ!?」

 得意満面な義姉さまは「だってぇ……」と言いながら、上半身を起こし、にっこり笑った。

「暇だったんだもん」

 僕は義姉さまの返答に、呆れるというか、義姉さまらしいというか……自然と溜息が漏れてしまう。

「……義姉さま、暇だったんだもん……じゃないでしょ? 今日は、念の為、大人しくしてなさいって言われたんだよね?」
「そうよ! 走ったりはしてないわ」

 大人しく……と言われ、走らなければいい……とか、そういう問題じゃないでしょ……まったく。
 ベッドのサイドテーブルをチラリと見ると、ご令嬢のたしなみでもある、刺繍が置いてある。
 やりかけだけど。

 一応、大人しくするつもりだったんだな。

 僕はクスッと笑い、義姉さまの腕を掴み、ベッドに座らせた。

「義姉さま。お願いだから、今日1日は大人しくしてて。心配だから」
「はぁぁぁい」

 元気な返事をしながら、ベッドにちょこんと座った義姉さまの屈託ない顔を見て、僕はある恐ろしい考えが頭に浮かんだ。

 うん、これは……もしかすると……いや、もしかしなくても……


 義姉さまは、婚約をなんとも思っちゃいないのでは!?


 悲しんでもないし、喜んでもない。
 いつも通り。特別な感情なし。

 ……それって、どうなんだろ……?
 恋敵ライバルとしては喜ばしいが、男として、アルベルトが哀れな気もする……それに、明日は我が身だと思うと……

 僕は遠くを見つめる。
 室内だけれど、遠くを見つめた。


 鈍感って……恐ろしい。
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