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お見舞いに……

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 次の日。
 
 ジェスターから義姉さまの状況を窺う手紙が届く。
 
 さすが、シトリン家。
 もう、義姉さまが落馬し、魔法を発現させた事を知っているんだ……どれだけの情報網を張り巡らせているんだ……婚約内定の件も、もちろん知っているんだろうなぁ。

 ジェスターはどうするんだろう……諦めるのかな……
 
 そんな事をぼんやり考え、窓に映った自分を見つめた。

 僕は?

 自問自答をしても、何一つ答えは変わらない。

 諦める?
 そんな言葉、僕の辞書に載ってるもんか。
 僕は絶対に諦めないから。

 思わず手に力が入り、持っていた手紙がくしゃくしゃになってしまった。
「あっ……」と、慌てて手紙を綺麗に伸ばしていると、最後の一文に気づいて、苦笑する。

「できれば、今日、お見舞いに行きたいのだが……」

 ちゃっかりしてるや。

 苦々しく思いながらも、ふふっと笑ってしまう。

 ジェスターが義姉さまを諦める訳ないか……
 ジェスターは義姉さまを諦めるかも……なんて1度でも、頭によぎらせた自分が馬鹿だったな。

「義姉さまの部屋に行ってから、返事を書くから。ちょっとまってて」

 ジェスターに返事を届けるべく、準備していたトーマスに伝え、僕は部屋を出る。


 昨日から義姉さまに会ってない。
 朝食は部屋でとるからと、顔を出さなかったし。

 義姉さま……大丈夫かな。
 身体も心配だけど、心がさ……義姉さまは、婚約が内定した事、どう思ってるのかな。
 思い悩んでいる? それとも、喜んでいる?
 どっちだろ。
 
 考えれば考えるほど、義姉さまの部屋に向かう足取りが重くなる。

 もし、喜んでいたら……辛いな。
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