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恋敵は……

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 婚約……内定……だと? アルベルトめっ!


 アルベルト・パライドル・タンザ。

 この国の第2王子。
 アルベルトは王子様なのに、かしこまれるのは苦手で親しみやすく、裏表のない真っ直ぐな性格で付き合いやすい。
 王族の威厳は? と心配になるほどに。
 とにかく、気のいい王子様。

 僕はアルベルトに幸せになって欲しい。
 あいつが婚約したならば、諸手を挙げて喜び、祝福した……義姉さまじゃなければ。


 僕と同じく、アルベルトに出し抜かれた形となった、もう1人の恋敵、ジェスターを思い浮かべる。

 ジェスターは策略家シトリン侯爵家の後継者。
 国王の右腕となり、この国の情報を手中に収める特別な家門。
 頭脳明晰、冷静沈着。
 敵対してはいけない家系と世間では恐れられているけれど、実際は、結構優しく、美しい顔にいつも微笑みをたたえている。まぁ、それも策略のひとつなのかもしれないけれど。

 2人ともいい奴には違いない。
 僕は親友2人が大好きだ。
 初めてできた僕の友人。

 そして……恋敵ライバル

 
 お互い、邪魔したり、邪魔されたりの牽制しあう毎日をすごしていた。

 鈍感な義姉さまは、よほどの事がない限り2人の気持ちにも気づかない。それは喜ばしく、鈍感万歳なんだけど……裏を返せば、僕の気持ちにも気づかないって事で……

 しかも、僕は義弟おとうと
 こと恋愛に関しては2人より少々分が悪いと感じていた。

 義姉さまは、あと1ヶ月で12歳。

 魔法を発現する気配が全くなかったから、僕は、多少楽観視していたのかもしれない。
 
 このまま義姉さまが魔道士にならなければ、恋敵が1人減る……と。

 それが、いきなり窮地に落とされた。

 
 まさか、王族権限をフルに行使し、候補ではなく、内定を決めてくるとは……
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