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婚約が……

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「でも、魔道士になっても、きっと何も変わらないよね」

 あれ……?

 僕が隣でダメージを受けているのをよそに、クスクス笑う義姉さまに違和感を覚える。
 ある疑問が頭をよぎり、僕は意を決して口を開いた。

「あの……ほんとはおめでとうって言うべきなんだけど……」

 義姉さまが首を傾げ、僕を見る姿がかわいくて、今から口にする言葉を捨てたくなる。

 こんな事、例え話でも口にしたくない。口にしたくない……けど、義姉さまがどう思っているか、気になってしまう……

「義姉さま程の魔力なら……アルベルトの婚約者候補……決まっちゃうかもね」

 僕は言いたくない言葉を口にした…………のに、義姉さまは、考え事を始めたのか、心ここにあらずという感じで、フンフンと僕の話に頷くだけで……

 おーい、義姉さま? 今、大事なこといったよ? 聞き流してない?

「ごめん。ミカエル、今、なんて?」

 …………やっぱり。

「だから、婚約が……」

 なんで僕が口にもしたくないセリフを何度も言わなきゃならないんだろ?

「婚約? 誰の?」
「アルベルトと……」
「えっ? アルベルト様、婚約したの?」
「いや……だから……さ……アルベルトと」
「王子様だもんねぇ、アルベルト様。そっかぁ、婚約したのかぁ」
「いや、してないよ」
「え? そうなの? じゃあ、誰が……まさか……ミカエル!?」
「ちが……」
「ええ……知らなかった。もう、ミカエルったら、恋仲のご令嬢がいるなら、教えてよぉ」
「ち、違うっっ! だから、アルベルトと義姉さまの婚約が!」

 もう、最後の方の僕の言葉は悲痛の叫びに近かった。

「へ? 誰と?」
「アルベルトと……」
「誰の?」
「義姉さまの……」
「アルベルト様と私?」
「そう……」

 ……
 ……
 ……


「こ、こ、こ、こ、婚約ーーーー!?」


 僕は溜息を漏らさずにはいられなかった。

 本当に本当に、勘弁して……
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