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婚約が……
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しおりを挟むずっと義姉さまを守る為、勉強も魔法も剣術も人一倍頑張ってきた。
なのに、今日、義姉さまが落馬した時に、そばにいながら守れなかったのが悔しくて悔しくてたまらない。運よく魔法の発現で義姉さまは助かった……けど、本来なら僕が助けるべき事だったのに。
「いた……」
痛みを感じ、唇を拭うと赤い血が手についた。悔しさのあまり唇を噛み締めすぎたようだ。
義姉さまの落馬から数時間が経ったが、義姉さまはまだ目を覚まさなかった。
治療魔法では意識を戻すことはできない。
義姉さまの目が覚めることを待つことしか、今の僕にはできない事がもどかしい。
為す術もない苛立ちが、部屋の中を意味もなく歩き回らせ、少し落ち着こうと、椅子に座ってみても、まったく落ち着くことができず、結局すぐ立ち上がってしまう。
義姉さまの事で心配事が他にもある。
僕にとって、義姉さまの魔法の発現は喜ばしいことではなかった。
恋愛が比較的自由なこの国でも魔道士の血を残す為、王家は魔法を発現させた令嬢と結婚するのが望ましいとされている。
12歳。
魔力を持つ者の12歳は特別で、どんなに魔力があっても、12歳までに魔法が発現しなければ、魔道士にはなれない。
1ヶ月後に迫った義姉さま12歳の誕生日までに、魔法が発現しなければ、王子であるアルベルトは義姉さまを諦めざるを得なくなり、魔道士の令嬢と婚約するのでは? と淡い期待を抱いていた。
ところが、今日、膨大な魔力量の義姉さまが発現したことによって、僕の予想はひっくり返る。
第1王子はすでに相思相愛の幼馴染みの令嬢と婚約しているので、義姉さまは第2王子であるアルベルトの婚約者候補の最有力に上がってしまうだろう。
王族は10歳をすぎると婚約者候補を選び、しばらくお付き合いをしたのち、双方同意の上で婚姻を結ぶ事が多いのだが、アルベルトは婚約者候補を頑なに選ばなかった。
僕はその理由をもちろん知っている。
義姉さまが魔道士になるのを待っていたんだ。
今回の事で王家が……いや、アルベルトが義姉さまを婚約者候補に上げるのでは……いや、絶対にアルベルトは上げてくる。こんなチャンスを逃すものか。
候補はあくまでも候補だから、いくらでも破棄ができる。
僕は絶対に阻止するから。
考えを巡らせながら、悶々としていると、義姉さまが目覚めたとの連絡が入った。
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