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お披露目パーティーで……
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まるで、氷が張ったようなピキッとした緊張感が漂い、音楽だけが、ただ静かに流れているという空間と化した会場。
大人達は困惑した表情のまま、誰一人として、最初の言葉を発しようとはしなかった。
この重い空気を破ったのは、どこからともなく、タタタタッと駆け寄って、僕の事をギュウと抱きしめた義姉さまだった。
「ミカエル! 魔力があったのね! すごい強い魔力だわ」
僕の混乱をよそに、義姉さまは、こぼれんばかりの笑顔で僕を見つめ「おめでとう」と耳元でつぶやくと、びしょ濡れで呆然としているマドリア伯爵とゼロフ男爵の方をクルッと向いた。
「マドリアのおじさま、ゼロフのおじさま、我が義弟が失礼致しました」
義姉さまの声に我に返った2人は、全身が濡れた事、皆の前で恥をかかされた事に、カッと顔を赤くし、憤怒の形相を僕に向けた。
「どうしてくれる……」
「おじさま達に水をかけてしまい、申し訳ございませんでした。ミカエルは魔法を発現させたのです。初めての魔法ですから、少し暴走してしまったのですわ。本当にごめんなさい」
2人は会場にいる全員が固唾を呑んで、僕達のやり取りを見守っている事に気がつき、丁寧に謝罪している子供に声を荒げるのはまずいと思ったのか、引きつらせながらも、無理矢理、笑顔を作る。
「あ、ああ……大丈夫……だ。おめでとう。ミカエル様」
心にもない台詞が発せられたが、義姉さまの言葉に動揺し、全く頭には入ってこず、何度も何度も同じ言葉を心の中で繰り返す僕。
魔法が発現した……? 魔力ゼロの僕が?
そんな事……ありえるの?
……
……
いや、それは後で考えよう。
しっかりしなきゃ。
混迷していた心を、無理矢理、現実に戻し、とにかく場を収めなくてはと、僕は深々と頭を下げた。
「マドリア伯爵、ゼロフ男爵、大変申し訳ございませんでした。あまりに急な事で僕自身もコントロールできず……申し訳ございません」
「我が息子が申し訳ございません、マドリア伯爵、ゼロフ男爵。別室に着替えをご用意しましたので、そちらでお着替えください」
混乱しながらも、できるだけ丁寧に頭を下げていると、後ろから義父さまの声がし、僕に嬉しそうに笑いかける。
「すまなかったね。ミカエル。こんな大事な時に席を外していて。魔法を発現させたんだ、疲れただろう。君は少し休みなさい。後で詳しく話は聞くから……皆様、お騒がせ致しました。本日、アルフォント家次期当主は、魔道士になりました。めでたい事が重なり、喜ばしい事です。どうぞ、このめでたい日に、思う存分、楽しんでいって下さい」
義父さまが招待客にむかって、にこやかに話しかけると、僕を祝福する声があちらこちらで響き渡った。
氷が解け、水が流れていくように時が動き始める。
義姉さまは、僕の手を握り「行こっ。ミカエル」と歩き始めたが、ふと立ち止まり、振り返った。
「マドリアのおじさま。私、マドリアのおじさまのご子息と結婚するつもりはございません。私、美人ではないですけど、20歳も上の方と結婚なんて、こちらからお断りですわ」
義姉さまがにっこり笑う。
話を聞かれていたことに驚き、ばつの悪そうな顔をした2人を盗み見ては、胸のモヤモヤが晴れた気分になり、僕もこっそり笑ってしまった。
大人達は困惑した表情のまま、誰一人として、最初の言葉を発しようとはしなかった。
この重い空気を破ったのは、どこからともなく、タタタタッと駆け寄って、僕の事をギュウと抱きしめた義姉さまだった。
「ミカエル! 魔力があったのね! すごい強い魔力だわ」
僕の混乱をよそに、義姉さまは、こぼれんばかりの笑顔で僕を見つめ「おめでとう」と耳元でつぶやくと、びしょ濡れで呆然としているマドリア伯爵とゼロフ男爵の方をクルッと向いた。
「マドリアのおじさま、ゼロフのおじさま、我が義弟が失礼致しました」
義姉さまの声に我に返った2人は、全身が濡れた事、皆の前で恥をかかされた事に、カッと顔を赤くし、憤怒の形相を僕に向けた。
「どうしてくれる……」
「おじさま達に水をかけてしまい、申し訳ございませんでした。ミカエルは魔法を発現させたのです。初めての魔法ですから、少し暴走してしまったのですわ。本当にごめんなさい」
2人は会場にいる全員が固唾を呑んで、僕達のやり取りを見守っている事に気がつき、丁寧に謝罪している子供に声を荒げるのはまずいと思ったのか、引きつらせながらも、無理矢理、笑顔を作る。
「あ、ああ……大丈夫……だ。おめでとう。ミカエル様」
心にもない台詞が発せられたが、義姉さまの言葉に動揺し、全く頭には入ってこず、何度も何度も同じ言葉を心の中で繰り返す僕。
魔法が発現した……? 魔力ゼロの僕が?
そんな事……ありえるの?
……
……
いや、それは後で考えよう。
しっかりしなきゃ。
混迷していた心を、無理矢理、現実に戻し、とにかく場を収めなくてはと、僕は深々と頭を下げた。
「マドリア伯爵、ゼロフ男爵、大変申し訳ございませんでした。あまりに急な事で僕自身もコントロールできず……申し訳ございません」
「我が息子が申し訳ございません、マドリア伯爵、ゼロフ男爵。別室に着替えをご用意しましたので、そちらでお着替えください」
混乱しながらも、できるだけ丁寧に頭を下げていると、後ろから義父さまの声がし、僕に嬉しそうに笑いかける。
「すまなかったね。ミカエル。こんな大事な時に席を外していて。魔法を発現させたんだ、疲れただろう。君は少し休みなさい。後で詳しく話は聞くから……皆様、お騒がせ致しました。本日、アルフォント家次期当主は、魔道士になりました。めでたい事が重なり、喜ばしい事です。どうぞ、このめでたい日に、思う存分、楽しんでいって下さい」
義父さまが招待客にむかって、にこやかに話しかけると、僕を祝福する声があちらこちらで響き渡った。
氷が解け、水が流れていくように時が動き始める。
義姉さまは、僕の手を握り「行こっ。ミカエル」と歩き始めたが、ふと立ち止まり、振り返った。
「マドリアのおじさま。私、マドリアのおじさまのご子息と結婚するつもりはございません。私、美人ではないですけど、20歳も上の方と結婚なんて、こちらからお断りですわ」
義姉さまがにっこり笑う。
話を聞かれていたことに驚き、ばつの悪そうな顔をした2人を盗み見ては、胸のモヤモヤが晴れた気分になり、僕もこっそり笑ってしまった。
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