1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

魔法が……

3

　僕は慌てて馬から下り、義姉さまに駆け寄った。

「義姉さま……」

　大丈夫、息はしている。気を失っているだけ。
　怪我も……してない。良かった……
　
　安堵した僕は緊張が解けたせいか、自然に涙腺が緩み、視界がぼやけてしまう。

　誓いをたてたから、義姉さまの前では泣かない。
　泣かないけど……怖かった……

　大切な人を失っていたかもしれない恐怖が僕を襲い、ゾクッとする。

　少し離れて仕えていた従者を呼び、義姉さまを屋敷に運ぶ手配と医者を呼ぶよう指示を出し、僕は立ち上がった。
　
　ドックンドックンと激しく鳴り響く胸に手を置き、深呼吸をする。

　落ち着け。義姉さまは大丈夫だったんだから。

　馬に乗り、モンテーニ子爵のところに向かうと、ちょうど義父さまと子爵が話し込んでいたので、2人に報告し、僕は義父さまに深く頭を下げた。

「すみません。僕がそばにいながら」
「幸い何事もなかったんだ。気にするな。ミカエルは大丈夫だったかい？」

　義父さまは僕の頭に手を乗せ「ミカエルも今日は休みなさい」と言い残し、子爵と共に急いで屋敷に戻っていく。

　僕も自分の馬と義姉さまの馬を使用人に任せ、早足で屋敷に帰り、専属侍従のトーマスに様子を聞いてきてもらう。

　お医者様曰く、人より魔力量が多いが故、気を失ったのだという。初めての魔法の疲労は半端ないものだったのだろう。

　自室のベッドに倒れ込むと、大きく大きく溜息をついた。

　義姉さまが魔法を発現させた今日、僕がそばにいながら守れなかったのが悔しくてたまらない。

　今まで義姉さまに助けてもらった事、あの日、誓った事を思い出し、僕は唇を噛み締める。

　
　……何よりも誰よりも大切な人なのに。