グリム・リーパーは恋をする ～最初で最後の死神の恋～

再会 ―さいかい― side クラリス

6

「歌詞が間違っていたからな」

　私の疑問に天兄がさらりと答えてくれたが、言っている意味がわからず、首を傾げた。

　あれ？　歌詞、間違えてたかな？

「わざと違う歌詞を教えた」
「……へっ？」
「幼い美咲に違う歌詞を教えた」

　ご丁寧に2回目も説明してくれた雪兄の目を数秒見つめた後、私は声を張り上げる。

「違う歌詞を教えたぁぁ！？」
「ああ、人間の思い込みはすごいな」

　まるで他人事のように淡々と話す雪兄。

　幼い私に何してくれてるのよ！

「…………なんで？」
「幼い時期に間違って覚えた事柄を人は何歳くらいに正せるのか気になったから」

　ちょっとぉ、妹使って実験しないでくれますぅ！？

「お陰で僕達は再会できた。結果オーライ」

　うんうん、そうだね、結果オーライ………………じゃないよ！！

　ムスッと口を尖らせていた私の前に雪兄は苺がのった生クリームたっぷりのケーキを出した。天兄が一口食べて、旨いな。と満足そうに笑う姿をチラリと横目で見る。

　ケーキごときで誤魔化されないぞ……誤魔化され……ごま……うん、美味しい。

　一口、また一口と右手に持ったフォークが自然にケーキを口に運んでしまう。

　最後の一口を頬張った後、はっと我に返るとお兄ちゃん達が笑いを噛み殺していた。

　やってしまった…………