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前世 ―ぜんせ― side 美咲
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しおりを挟む「ところで……」
雪兄がチラッと私に視線を向け、怪訝な顔をする。天兄は不愉快そうに顔を歪めた。
「また、颯太のところに行ってたのか?」
「婆さんも一緒にいたんだろうな?」
相変わらずのシスコ……いや、心配性の兄達は林原颯太……幼馴染の颯ちゃんと私の事を心配している。
そう……兄達はシス…………もとい、とても妹思いなのだ。ええ、とっても。
疑いの視線がグサグサと私に突き刺さる中、この2人を相手に誤魔化しきれるはずもなく、私はできるだけ目を合わせぬよう、ゆっくりと顔を背けた。
「うーーん…………颯ちゃんの部屋に……いたからなぁ」
明後日の方向を見ながら、ポツリポツリ答えるとお兄ちゃん達は片眉をピクリと上げ、どこに隠し持っていたのかスマホを高速スピードでスチャと出す。そして、我先にと颯ちゃんに電話を掛け始めた。
「やーーめーーてーー! 何もないからっ!」
なんで、2人同時に電話しようとするの!!
お兄ちゃん達の腕にガシッと抱きつき、必死で止める私。
「美咲。男はオオカミなんだぞ」
「特に颯太は危ない」
「あいつの諦めの悪さとしつこさとアホさを甘く見るな」
「アホは関係ないでしょ!!」
いくら何でもアホは酷すぎない!? それ、ただの悪口だからっ!
「あのねーー」
「颯太と2人っきりになる事は、今後、禁止」
幼馴染のプライドを守る為、戦う気満々でむんっと力を込め、反撃しようと口を開いた時、雪兄にさらりと禁止令を出されてしまった。
「いや……だって……何言ってるの!?」
もぉぉぉ、2人ともシスコンがすぎるよっ!
「颯ちゃんとはなんでもないもん。颯ちゃんの事、男って思ってないもん。颯ちゃんだって私の事、女だって思ってないよ! 私の理想はねぇ、黒髪の貴公子様なんだからぁぁ」
肌身離さず持っている乙女ゲームの推しキャラのアクリルキーホルダーを印籠のように自慢げに出した私にお兄ちゃん達は絶句し、しばし沈黙が流れる。
「どこが素敵かって言うとねぇ……」
推しの話を披露しようと意気揚々と喋りだす私を横目で見ては、前もって打合せしていたのかと思うほど同時に、そして特大の溜息をつく2人。
「颯太……不憫だ…………」
えっ? なに急に2人とも颯ちゃんの味方になってるの!?
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