グリム・リーパーは恋をする ～最初で最後の死神の恋～

邂逅 ―カイコウ―

3

　買い物が終わり、馬車に乗り込むとミカエルは時計を取り出し、ねぇと僕に声を掛けた。

「まだ早いしさ、屋敷に遊びに来ない？」

　ニコニコと笑うミカエルに、たまには遊びに行くのも悪くないな……と僕は頷き、誘いを受ける事にする。

「これはこれは、ジェスター様。お久しぶりです」

　屋敷に着くと、アルフォント家執事長のディールに笑顔で出迎えられ、応接室に通された。ソファーに座り、手際よく準備された紅茶を一口飲んでから、ミカエルは心配そうな顔をする。

「今日はさ、少しは気晴らしになった？　なんか最近忙しそうだったし。何かあった？」

　……たしかに表の仕事と闇の仕事をこなしつつ、町にも行ってたから忙しくはあった。でも、まさか心配をかけてるとは思わなかったな。改めて思う、本当にミカエルはいい奴だ。

　が……いくら親友といえども彼女の事は話したくない……僕だけの胸に大切にしまっておきたい。

「ありがとう、大丈夫だよ」

　笑顔で答え、僕も紅茶をクイッと喉に流し込んだ。

「そう？　ならいいけど。あ、このチョコレート美味しいよ」

　ミカエルは多少引っかかりを感じたような表情をしたものの、すぐに穏やかに微笑み、目の前にあるチョコレートを手に取った。僕もお勧めのチョコレートに手を伸ばしかけた時、ノックの音がし、扉が開く。

「できたてのスコーンはいかがですか？」

　ティートロリーにスコーンを乗せ、メイドが部屋に入ってきた際、誰かが喋っている声が扉の隙間から聞こえ、僕は動きを止めた。

「ミカエル、どこかな？」
「ただ今、来客中でして……」

　胸がドクンッと大きく大きく震える。

　部屋の外から聞こえた女の子の微かな声に僕は目を見開き、耳に神経を集中させた。

「そっかぁ。じゃあ、あとにするわ」

　この……声……は……

「ジェスター？」

　紅茶を急いでソーサーに戻し、立ち上がる。

「ジェスター！？」

　急な僕の動きにミカエルは驚いたのか、名を何度も呼ぶが、今はそれどころじゃない。

　急いで応接室を出ると、この場から去ろうとしていた女の子が扉の音に反応して振り返った。瞬間、僕は息を呑む。

　その声、その姿、その……輝き……


　見つけた…………僕の求めていた少女ひと。