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見舞 ―ミマイ―
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しおりを挟む「それにしても、驚いたな。クラリスが魔道士になったなんて」
淹れてもらった紅茶をコクリと一口飲み、クラリスの様子をこっそり窺った。
魔道士になった事もそうだけど、アルベルトとの婚約内定をクラリスはどう思っているのだろう。
「ですよね。私もです」
「そう……だね。もうすぐ12歳だったから、クラリスは魔道士にはならないと僕も思っていたよ」
これは本音であり、願いでもあった。
生まれた時から魔力を膨大に秘めていたクラリスは11歳になっても、魔法を発現していなかったから、油断していたのは僕も猛省しなくてはいけない。
魔道士となる素質がある者は必ず12歳の誕生日までに魔法を発現する。クラリスが発現しなかったら、アルベルトには他の魔道士の女性と婚約するようシトリン家は強く推すつもりだった。
しかし、クラリスは魔道士になってしまい……で、アルベルトと婚約か。
いろいろ裏事情があるとは言え、魔道士の血を色濃く残したい王族にとって、クラリスはアルベルトの婚約者としてうってつけなのも事実。そして、なにより本人が惚れ込んでいるのだから。
では、クラリスは?
屈託なく笑うクラリスの感情がまったくわからず、少し困惑する。少なくとも、喜びか悲しみかくらいはチラリとでも醸し出していてもおかしくないのに。クラリスから婚約に関しての感情が一向に読み取れない。
こう言っちゃあなんだが、僕の察しはすこぶるいい。クラリスは少し規格外なのだ。
たまにすごく大人びた事も言い、僕を驚かせる事もあるが、だいたいはちょっと抜けている。
まぁ、そこがかわいいところでもあるけれど。
でも、急な婚約、しかも相手はこの国の王子。なのに感情が全く読めないなんて……クラリスは何を思っているのだろう……
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