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内定 ―ナイテイ―
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我がタンザ王国第2王子であり、王位継承権第2位の僕の幼馴染、アルベルト・パライドル・タンザ。
裏表のない真っ直ぐな性格で、アルベルトといる時は年相応に喋り、笑い、喧嘩もできる僕の大切な親友だ。だが、今は濃いブラウンの瞳が得意げに笑っている姿を想像しては、忌々しく思ってしまう。
アルベルトがクラリスを好きなのは、一目瞭然。
わからないのは当の本人クラリスだけ。
……アルベルト、やってくれたな。
僕はデスクの端をじっと見つめ、暫し考えた。傍に置いてあるベルを手に取り、再びルークを呼び出す。
「今すぐ王宮に行く。国王に謁見を」
「これはまた……急な事ですので、すぐに謁見できるかどうか……」
小さく頭を下げたルークは口をもごつかせていたが、僕は強い口調で命令を下した。
「死神の名を出せ」
「御意」
僕の言葉に深々と頭を下げ、音も出さずにスッと姿を消す。
国王にとって死神の名は最優先。そっちがその気なら、こっちだって考えがある。
僕は何もない宙を睨む。
僕……このジェスター・シトリンが王家の思い通りにさせやしない。クラリスの事だけは絶対に……絶対に譲るものか。
決意を強め、デスクに外した眼鏡を置く。漆黒のローブをバサッと羽織り、フードを目深にかぶった。
裏表のない真っ直ぐな性格で、アルベルトといる時は年相応に喋り、笑い、喧嘩もできる僕の大切な親友だ。だが、今は濃いブラウンの瞳が得意げに笑っている姿を想像しては、忌々しく思ってしまう。
アルベルトがクラリスを好きなのは、一目瞭然。
わからないのは当の本人クラリスだけ。
……アルベルト、やってくれたな。
僕はデスクの端をじっと見つめ、暫し考えた。傍に置いてあるベルを手に取り、再びルークを呼び出す。
「今すぐ王宮に行く。国王に謁見を」
「これはまた……急な事ですので、すぐに謁見できるかどうか……」
小さく頭を下げたルークは口をもごつかせていたが、僕は強い口調で命令を下した。
「死神の名を出せ」
「御意」
僕の言葉に深々と頭を下げ、音も出さずにスッと姿を消す。
国王にとって死神の名は最優先。そっちがその気なら、こっちだって考えがある。
僕は何もない宙を睨む。
僕……このジェスター・シトリンが王家の思い通りにさせやしない。クラリスの事だけは絶対に……絶対に譲るものか。
決意を強め、デスクに外した眼鏡を置く。漆黒のローブをバサッと羽織り、フードを目深にかぶった。
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