鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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隣国王子がやってきました

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 それからの1週間は目が回るような忙しさだった。
 
 なんでクラリスを口説きに来る奴の為に俺が東奔西走しなきゃならないんだよ!

 不満がムクムク湧いてくるが、これも公務の一環、しかも重要な外交である。完璧に出迎え、無事に帰国してもらわねばならない。
 学園でも粗相がないよう手配に抜かりなく……抜かりなく……ってなんだこれは!!

 最終確認の為、セドニー王子来訪に関する書類に目を通し、驚愕する。クラリスと同じクラスに手配されているじゃないか!!

「ナクサス、これはどういうことだ?」

 ナクサスを呼びつけ、書類を指し示す。ナクサスは眉をあげ「おや?」とつぶやいたところをみると、ナクサスも知らなかったのだろう。

「なんの手違いだよ……」

 俺は頭を掻きむしり、苛々を吐き出さずにはいられなかった。
 
 ちくしょー、インパルドの使者に裏で手を回されたか?

「どう致しますか?」

 ナクサスの言葉を受け、他の書類をチラッとみるが、全ての事は決定されている。今更、変更する事は不可能だ。王子が来訪するのは明日なのだから。

「仕方ない。この予定通りに動け」
「承知いたしました」

 ナクサスは書類を受け取り、パラパラと確認し、各担当者に的確に指示を出す。俺は机にバタンとつっぷし、その様子を見ていた。ナクサスに行儀が悪いと注意されたが、疲れ切った俺は寝たふりをする。

 クラス決めは初期に指示をだしたきりだったからな。まさか手を回されるとは……ギリギリまで最終確認を怠った俺のミスだ。唯一の救いはジェスターが同じクラスにいる事か……あいつは恋敵ライバルとしては厄介な奴だが、頼りにはなる……ああ……ちくしょー、クラリスに手を出すなと釘を刺すことも、クラリスに気をつけろとも言えないのがもどかしい。公でない以上、妃探しの件は口にしないことが暗黙の了解になっている。いや、だからって、俺の婚約者が狙われているんだぞ……

「…………様」

 ああ、疲れた……が、クラリスが狙われている以上、対策も練らないとな……

「……ルト様」

 でも、どうやって練ればいいんだ? 結局は色恋の話だし。俺とクラリスの想いが通じ合っていればこんな心配無用なんだが……残念ながら、3ヶ月前のデート以来、進展なし、だ。デートすら行けていない……

「……ルベルト様」

 ああ、クラリスに会いたいなぁ……

「アルベルト様?」
「さっきからうるさいぞ、ナクサス。考え事の邪魔するな」
「すみません……」

 俺は再び明日からのことに頭を悩ませ……ん? アルベルト様? まてよ……この声は……

「クラリス!!」
「はい」

 俺が慌てて顔を上げると、目の前に笑顔のクラリスが座っていた。

 えっ? うそ? 夢? 幻? 疲労が限界にきて、とうとう幻覚が?
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