鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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お出掛けすることになりました

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「美味しくできたと思うのですが……お口に合うかしら? 1枚食べてみます? もし、好みでなかったら、私が責任を持って食べますから!」

 ガッツするクラリス。女性の……いや、クラリスの胃袋ってどうなっているんだよ……でも、まぁ1枚くらいなら食べられるし、クラリスに美味しいと伝えたいし……食べるだけならば、俺の理性も保てそうだし。

「そうだな……いただこうかな」
「はいっ」

 にっこり笑ったクラリスはクッキーを1枚つまみ、俺の口元に持ってくる…………え? まさか、あーんってやつか!?

 理性、崩壊寸前……
 
 わざとか? わざとなのか!? 俺を弄んでいるのかぁぁ!?
 弄ばれていようが、天然だろうが、鈍感だろうがいい!(クラリスの場合、後者2つだが……)もちろん、食べるぞ。こんなチャンスないからな。

 俺は広くない車内を何度も見渡し、誰にも邪魔されない状況である事をしつこく確認する。

 今まで、散々邪魔をされているからな……いきなり、ジェスターやミカエルが壁から現れても、俺は驚かないぞ。

 疑心暗鬼になっている俺にクラリスが不思議そうに首を傾ける。

「アルベルト様?」
「ああ。すまない」

 俺が口を開けるとクラリスはそっと口の中にクッキーを入れ……クラリスの手から食べたクッキーは照れと緊張とで最初は味も良くわからなかったが、この喜びの瞬間と手作りクッキーを味わう為、何度も何度もゆっくり噛み続ける。

「チーズが濃くて美味いな」

 素直に感想を言うと、クラリスは嬉しそうに微笑んだ。

 なんだこれ……幸せ空間なんだけど……邪魔も入らない、こんな空間が世の中に存在していいのか!?

 クッキーをクラリスから渡され、感慨深く眺めているとメモが張り付いていて……メモ? 俺はメモを手に取り、読もうとした。「あっ」という声と同時にクラリスは手からメモを取っていき、チラッと上目遣いで俺を見る。

 ……今の一瞬で見えた文言。


「婚約破棄、計画書」


 俺の幸せ空間は速攻崩れた……
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