鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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お出掛けすることになりました

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「アルベルト様……」

 初夏の日差しは眩しいものの、すごしやすい季節となったある日、授業の間の休憩時間に珍しく1人でクラリスが俺のいる教室にきて、俺を呼び、廊下から手招きをする。ミカエルをチラリと見ると、クラリスの事に気づいてないので、俺はこっそり廊下に出た。

「どうしたんだ? 珍しいな」

 俺はクラリスに呼ばれた事で弾んでしまっている心がバレないよう、わざとぶっきらぼうに接してしまうが、クラリスは気にせず、ニコニコしながら話し始めた。

「アルベルト様、今度の休日、お時間ありますか?」
「あ? ああ……まぁ……」
 
 クラリスは楽しげな声で、俺に休日の予定を聞く。

 みんなで久しぶりにピクニックでも計画を立てたのかな?
 いつもならミカエルから話を持ち掛けられるけど、どうしたんだろう? 

「あの……町へ付き合っていただきたいのですが……」
「え? 町?」
「はい!」

 へぇ、みんなで町に行く計画でもたてたのか。
 たまには、町に行くのもいいかもな。

 俺は頭の中で休日の予定を思い出す。どうしても外せない公務が1つ。あれは16時からだったな。15時には抜け……うーん、ジェスターとミカエルあいつらを置いて、俺だけ抜けるのかぁ。うー致し方あるまい。

「ああ、俺は大丈夫だが、16時から予定があるからそれまで……」
「そう、ですか……んー、じゃあ、ミカエルを誘ってみようかな。ミカ……んぐ」

 クラリスがボソボソと独り言を言ったあと、大きな声でミカエルを呼ぼうとしたので、慌てた俺は両手でクラリスの口を塞ぐ。

 ちょっとまて。ちょっとまて。えっ? どういうことだ?
 ミカエルを誘ってみようかな……? え? 
 そもそも、ミカエルもジェスターも一緒に出掛けるんじゃなかったのか?
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