鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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クラリスの事情 〜クラリス視点〜

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 17歳で命を落とした前世の事を考える。

 事故死で即死……気がついたら、この魔法が存在する異世界に生まれていた。
 生まれた時から、ぼんやりと記憶はあったから、頭をぶつけて思い出した!……なんて、劇的な出来事もなく、この世界の子供として普通に成長してきたけど。

 たまに思い出す。

 残された家族の事。
 皆を悲しませてしまったんだろうな……私。
 
 少しアンニュイな気分になっていた時、扉が開く音でハッと我に返る。

 いけない、いけない。
 王宮魔道士長ザラ様の前で、ぼんやり考え事なんて……

「ザラ、ちょっと休憩させろ」

 凛々しい男性の声がして、振り返ると王宮騎士様が入ってきた。

「兄さん、来客中、仕事中」

 ザラ様は騎士様をまったく見ずに、冷ややかな声を出す。
 
 兄さん? ザラ様の? 王宮騎士のエドワード・ブライトン様?
 
 王宮騎士エドワード・ブライトン様。
 
 ザラ様の兄上で次期王宮騎士団長と呼び声も高く、我が国、トップの騎士様。男らしいキリッとしたお顔……うーむ、かっこいいわ。

「お初にお目にかかります。クラリス・アルフォントです」

 思わず見惚れていた私、慌てて立ち上がり、令嬢スマイルとともに丁寧にお辞儀をする。

「あぁ、失礼。クラリス嬢。ザラの兄のエドワード・ブライトンです。ご一緒しても?」
「兄さん!!」
「はい、私は構いませんが……」
「ほら、ご令嬢もいいっていってるぞ」

 はぁぁ。
 ザラ様のため息……ザラ様もため息つくんだ!
 私は悪魔と呼ばれていた、ザラ様のため息が微笑ましくて、こっそり笑ってしまった。
 
 こんな兄弟のやり取り懐かしいな……
 
 いつの間にか私の隣にエドワード様が座っていて、ニコッと笑う。
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