鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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意外な強敵、現れました

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「悪魔って……?」
 
 思いがけぬ言葉を聞いたせいか、クラリスは戸惑いを隠せない様子だった。

「今、思い出しても……実技なんて、谷から落とされたもんな」
 
 俺が授業の内容を呟くと、ジェスターは横でウンウンと頷く。

「川にも落とされたな、そう言えば」
「あれはきつい……」
「氷漬けにも、されそうになったな」
 
 俺とジェスターは顔を見合わせため息を漏らす。

「なに? それ?」
「ザラ先生の授業だけど?」
「!?」

 クラリスは目を見開き、声も出なかったようで……しばらくして出た言葉は少し不安げなものだった。

「そ、そうなんですね。明日、私、大丈夫かな?」

 今まで、黙っていたミカエルがクラリスの顔を覗き込んだ。

「義姉さま、僕、一緒に行こうか?」

 いやいやいや、まてまて。
 俺が一緒に行くのが筋ってもんだろ? 婚約者なんだし!
 不安そうなクラリスを支えるのは俺の役目だ。

「王宮なんだから、俺がついてってやるよ」
「僕が行くよ。ザラ先生に久しぶりにご挨拶も兼ねて」

 ジェスター、お前、関係ないだろっ!

 俺はジェスターをキッと睨むも、ジェスターは俺の事は眼中になく、クラリスに優しく微笑みかけている。

 婚約者の存在、無視するなーーーー!

「ありがとうございます、みんな。大丈夫。とって食われるわけじゃなし。それに、それぞれ明日は予定があるって、言ってましたでしょう?」
「うっ」

 俺を含め、3人とも言葉を詰まらせる。
 そうなんだよ……明日は、謁見だの、帝王学だの入っていて……

「用事が終わったら、すぐ行くから!」
 
 揃えたわけでもないのに、3人の声がはもった。

「ありがとうございます。でも、ホント、大丈夫ですよ!」

 クラリスは不安な様子も見せずに、いつものようにニコニコしていた。
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