鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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意外な強敵、現れました

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「そうなんです。魔力制御装置ができたとのことで……明日、受け取りに行くんです」

 クラリスの「魔法の勉強終了。1年間お疲れ様お茶会」……まぁ、ただのお茶会なんだけど……久しぶりにいつもの4人が集まり、話しをしていた時だった。
 1年……今まで俺が聞いた中でも最長の時間をかけ、魔法の勉強を終わらせたクラリスは、やっと解放され晴れ晴れとした顔をし、魔力制御装置が完成したことを嬉しそうに話していた。
 
 一方、俺は睡眠不足のため、少しやつれていた……この1年、ジェスターから送られてくるリストに埋もれる夢を見るからだ。
 クラリスにも心配され、ジェスターに恨みがましい視線を送るも、どこ吹く風。邪魔する手を緩める気配はまったくない。
 
 1年……そう、俺と婚約してからも1年が経った。俺はこっそり心の中で「婚約死守1年記念」のお祝いもしていた……誰も祝ってくれないからな……

「ザラ様って、どんなお方ですか?」
 
 クラリスの無邪気な質問に、ザラの授業が思い起こされ、お祝い気分は吹き飛び、暗い気持ちになる。
 なぜ、クラリスがザラのことを気にするのか……魔力制御装置を製作したのがザラであり、明日、初めて会うからだろう。
 
 魔力制御装置

 Sランク以上の魔道士(一部を除く)には、着用が義務づけられている装置。
 強い魔道士は国の宝であると同時に脅威でもある、諸刃の剣。他国に目をつけられても危ない。故に、多少魔力を制御した方が、国及び本人を守ることになる。

「ああ、ザラ先生か……」
「ザラ先生ね……」

 低い声音のジェスターと言葉が重なった。

「えっ? なに? 変な人なんですか?」
「いや、そんなことは……」
「ないけど……」
 
 俺もジェスターも鍛錬の厳しさを思い出しては言いよどむ。
 
「えーと……なにか、ありますか?」

 俺らは同時に叫んだ。

「あの人は、悪魔だ!」
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