鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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あれから3ヶ月経ちました

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「王子、ジェスター様がいらっしゃいました」

 噂も落ち着き、使用人達の信頼も取り戻しつつある、少しのんびりした午後、ナクサスがジェスターの来訪を知らせた。

 来たか……

「ああ、通して」
 
 はあああああ。
 ため息……だ。
 今日はとうとう、ご本人様の登場だ。

 クラリスとの婚約から3ヶ月。
 まず、ミカエルの邪魔が入り、俺は王宮での信用をなくすというダメージを受ける……ミカエルが大人しくなったな、と思っていたら、策略家ジェスターの攻撃ターンだ。
 
 ジェスターから定期的に届けられたリストが山積みになっていた。目も通してないリストを横目で見て、げんなりする。

「婚約者候補」のリスト、だ。

 この中から、婚約者を選べとの無言の圧をかけてくる。無視していたら、とうとう今日、直々に説得に来たわけで。

「やあ、こんにちは。アルベルト」

 にこやかに入ってくるジェスター。相変わらずきれいな顔である。
 ジェスターは俺の前に座り、メイドが用意した紅茶を一口飲むと、更にニコニコしながら、本題に入る。

「僕の選んだご令嬢達に気になる女性はいたかい?」

 いるわけねーだろ!
 俺には心に決めた人がいるんだから!

「友人の意に染まない結婚は心が痛むっていってたよな? ご令嬢達も意に染まない結婚は可哀想だぞ!」

 机に肘をつき、ブスッと不機嫌丸出しで文句を言うと、ジェスターは澄ました顔して淡々と話す。

「ああ、ご心配なく。こちらに名を連ねている方々は、君と結婚したいと望んでいるご令嬢だ。だから、可哀想なことはない。むしろ、喜ぶ」
「……よく、探したな」

 ……そんな情報、王家でもわからないぞ。

 もう何を言っても無駄そうな雰囲気に疲れて、机に突っ伏した。 

「我がシトリン家の情報収集力を舐めてもらっては困る。総力をあげて調べ上げたからな」
 
 こんなことに総力使うなよ! 情報力の無駄遣いだろ!!

「僕はご令嬢達を悲しませることは本意ではない。そこは、抜かりなく調べてある。なので、どの令嬢と婚約しても大丈夫だ。安心しろ」

 安心できるかあぁぁぁぁぁ!

 うう~、口下手な俺がこいつに勝てるわけがない。そんなの、わかってる。わかってるけど……

「お、俺の気持ちは?」

 やっとこさ、絞り出す様に声をだし、上目遣いでジェスターをジトッと見る。
 ジェスターは満面の笑みを浮かべた。

「知るか」

 
 たしか、俺のこと、大切な友人って言ってたよな……?
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