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ご令嬢がやってきました
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しおりを挟むナクサスは俺を貶める作戦は埒が明かないと、別の角度から、説得にかかる。
まず最初に俺を貶めるって、酷すぎじゃね?
「マリー様、失礼ですが、クラリス様は身分も魔道士ランクも上のご令嬢。申し訳ございませんが、ここは諦めていただけませんか?」
格上の令嬢ならば仕方ないと諦めてもらう作戦か……ちょっと酷な言い方だけど、しょうがないな……かわいそうではあるが、これで諦め……
「身分と魔導士ランクが高いというだけで、気の利いたセリフ1つ言えない、口も悪い、言葉も足りない王子様とご婚約なんて、クラリス様が可哀想ですぅぅぅぅぅ」
えええ……
誰の味方? 誰目線?
わけわからん……どうすりゃいいんだ?
でも、すごいな。
ナクサスの言葉、めちゃくちゃ正確に再現したじゃん。
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いやいや、いかん。すっかり、マリー嬢のペースじゃないか……
それから数時間、泣きじゃくるマリー嬢相手に、俺とナクサス、2人がかりで宥め、説得し、マリー嬢はようやく帰っていった。
来客の間に入室した時は明るかった空が、今はもう真っ暗だ。
俺もナクサスもヘトヘトである。
私室に戻り、俺はベッドに倒れ込む。
さすがのナクサスも疲労困憊なのか、ベッドに倒れ込んだ俺に嫌味をいう余力も残ってないみたいだ。
そして、俺は枕に顔を埋め、ゆっくりと目をつむり、さっきのマリー嬢とのやり取りを思い出す。
「私の婚約はまだ発表されていないのに、なぜ、ご存知だったのですか?」
俺はこのタイミングで乗り込んで来たマリー嬢に最初から違和感があり、帰り際に質問した。
「ええっと……なんでだったかしら? ああ……そうですわ。アルフォント家のミカエル様から早馬が来まして、今なら、クラリス様との婚約が公になっていないから、間に合うと……クラリス様は王子妃に興味がないので、ぜひ、私にアルベルト王子様の婚約者に……と」
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ナクサスが珍しく俺に慰めの言葉をかけた。
人の噂も七十五日。
耐えろ、俺。
これもクラリスと婚約を貫くためだ。
あと68日…………はぁぁ。
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