鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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婚約内定、決めました

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 俺はアルベルト・パライドル・タンザ。
 タンザ王国の第2王子として生まれた。

 第2王子というのは、なんとも中途半端な存在で王位継承権第2位であり、王位を継ぐ可能性は低い。ただ王位継承権がある以上、義務は果たさなくてはいけないわけで。
 正直、俺は王位なんていらないが、投げ出すこともできず、悶々もんもんとしている日々である。

「父上、アルベルトです。お呼びとの事で参りました」
「入れ」
 
 父上の私室の扉を開けると、寛いでいる父上が俺に席を勧める。

「アルベルト、久しぶりに顔を見た気がするの」
「父上、1週間前にも呼ばれましたが……」
「そうだったかのぅ」
「はい」
「1週間前の話を覚えておるか?」
「…………はい」

 はぁ……本題、突入……

「……私の婚約者候補についてです」
「おお、そうだった! で、決めたのか?」

 なにが、おお、そうだった! だよっ。
 我が父ながらこの飄々ひょうひょうとした感じが憎たらしい。

「いえ……まだ」
「そろそろ、決めんとなぁ。お前は王子なのだから」
「…………はい」

 わかってる。俺は王子だ。
 我が国は自由恋愛も多いが、俺は王子だからそうもいかない。
 やはり魔道士の令嬢との結婚が最善なのはわかっている。

 魔力をもって生まれてくるのは、一握り。
 その中で魔法を発現させることができるのは更に少なく……魔法は必ず12歳までに発現し、魔道士と呼ばれる存在となる。

 王家は魔道士の血がより濃く流れ、その血を絶やさぬ為に魔道士と結婚するのが望ましいと言われているが、父上は個人を尊重しており、想い合っているのなら、魔道士でなくても良いと言っている。

 だが「想い合っている」という条件が1番の難関だ。
 俺がずっとずっと片思いしている令嬢。

 クラリス・アルフォント公爵令嬢

 膨大な魔力を秘めていて、その魔力量は王宮魔道士長と同レベルだとも言われている。

 が、発現していない。

 クラリスの魔力はとてつもない魔道士になる可能性があるのだが、発現しなければ、ただの人だ。
 
 時間がない。

 クラリスはあと1ヶ月で12歳の誕生日を迎える。
 クラリスは魔道士ではない。
 クラリスと今すぐ両思いになることは不可能。
 俺は王位継承権を持つ者の義務として、将来の相手を決めなくてはならない。

 四面楚歌だ。

 1ヶ月、あと1ヶ月だけ答えを伸ばそう。
 クラリスの誕生日まで……希望を……

「父上、あと1ヶ月……」
「失礼致します。今、アルフォント公爵様から連絡が入りました」
 
 父上の側近の声が扉のむこうから聞こえる。

 わざわざ伝えに来るということは、よっぽどのことか? アルフォント家で何が起こったんだ?

「申してみよ」
「はっ、クラリス・アルフォント公爵令嬢の魔法が発現したそうです。我が国トップクラスのSSクラス魔道士の誕生です」
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