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推す
月子さん 1
しおりを挟む「……月子さん……その団扇……」
クール女史で通っていた私がもっていた派手な団扇を見つめるきぃ君。
呆然としている顔も麗しやー。
私はだらしなく頬が緩む。
いや、今、それどころじゃない。
「えーと、ですね。手作りでして、きぃくんに迷惑が掛からないよう反射しない仕様になってます!!」
この状況を打開する手立てが、結局思いつかなかった私は最後の手段、開き直るを爆発させ、力作団扇を得意げに語る。
「……えっ……そういうことじゃなくて……」
「じゃ、このペンライトについて語りますかっ!」
「えっ……そういうことでも、なくて……」
ああ、困った顔も麗しやー。
「あの……さ、月子さんにライブのチケット送ったけど……招待者席にいなかった……よね」
不思議そうな顔で質問するきぃくんに即答する。
「招待者席のチケット使ったら、きぃくんにお布施できないじゃないですかっ」
「お、お布施……?」
「推し貯金は使ってこそ!」
ガッツポーズを決める私に戸惑うきぃくん。
なんてったって、冷静沈着スーパーウーマンの私のガッツポーズである。
そりゃ、戸惑うよね……アハハハハ。
「あ、ありがとう……ございます…………えっと……ごめん……その紙袋に入っているのは……?」
「きぃくんグッズです!」
だんだん麻痺してきた私の脳は、きぃくんの事を話すのが、楽しくて楽しくて仕方がなくなってしまった。
友人達は恋に仕事に子育てにと、皆さん忙しくて、私の推し活に誰も付き合っちゃあくれもしない。
しかも、私はクール女史。友人にはこんな姿を見せたことなし!
推しの話を語れる!
ただそれだけで、私は、今、幸せである。
まぁ……難点は、語っている相手が本人だという事だけど。
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