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番外編 バストリー・アルマンの事情

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「バストリー! どうしてくれるんだっ!」

 バンッと大きな音を立て、勢いよく開いた扉からロイ王子殿下が僕に怒号を浴びせる。

 ここは王宮にある王子専用執務室。

 この国の宰相の息子である僕、バストリー・アルマンはロイ王子殿下の公務の補佐を担っている。

 まぁ、補佐とはなんぞや?と疑問に思うほど、ほぼ僕がメインで公務をこなしているが。

 怒り狂っている殿下をチラリと見て、作成中の書類の束を机の上でトントンと弾ませた。

「どうしたんです?」
「お前がテレーゼに不細工だから婚約破棄すると言えと言ったから、破棄だと言ったら、ハイウォール家の兄達が婚約破棄同意書なるものを持ち出して、本当にテレーゼと破棄になったんだが!! わかっているのか? 破棄だぞ? 婚約破棄! こ、ん、や、く、は、きっ!」

 殿下は何回ハキハキ言ったら気が済むのだろうか?

 早口言葉なみに破棄と叫び散らす殿下を無下にするわけにもいかず、僕は書類の最終確認をしていた手を止める。

「まさか、殿下は破棄すると言葉にしてしまったのですか?」

 僕から視線を逸らし、ばつの悪そうな殿下の顔が全てを物語っていた。

「……ああ、うん。だが、そう言えってバストリーが言ったんじゃないか!」
「匂わせたら……とは言いましたけどね」

 僕は視線を書類に戻し、再び手を動かす。

「……えっ…………いや、まぁ……婚約破棄同意書なんて存在知らなかったし……俺がちょっと言ったくらいで秒で婚約破棄が成立するなんて思わないじゃないか! そんな簡単に」
「ご婚約の取り決めを確認されていなかった殿下のミスです。まぁ、テレーゼ嬢の容姿が気に入らなかったのでしょう? 良かったではないですか。ああ、それから……僕はテレーゼ嬢が不細工だなんて一言も口にはしてませんからね」

 本来なら殿下がやるべき書類の提出期限が迫っていてイライラしていた僕は、ばっさりと殿下の言葉をぶった切った。

 僕はのんびり殿下の文句に付き合っている暇はない。
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