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6話 休息の小屋
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レインは雷魔法を使う相手に鉄製の装備を使うのはタブーだと知っているので持っている短剣と盾をハンドバッグの中にしまう。魔導士は早速動き出す。得意とするテレポートでレインの背後へと移動するがレインはすぐに反応して前方へ回転する。レインはその態勢から腰をグッと捻って右腕からパンチを繰り出す。魔導士はテレポートでその攻撃を避ける。
「テレポートが面倒だな」
レインはいかにもめんどくさそうな表情を浮かべて「スキル格闘家」と唱える。
「雷対身」とスキルを使うとレインの体を黄色のオーラが囲む。レインの目の前にテレポートした魔導士は両手を突き出して雷の玉を至近距離で放とうとする。レインは相手の胴体に右足で横蹴りをいれると、魔導士は空中へ吹き飛ぶ。
「耐性をいれても多少ピリッとくるな」
今のレインにはそんなことは取るに足らない事実だ。魔導士は困惑した表情で腹を抑えているが攻撃の手を休めなかった。先と同じようにレインの背後へ回るがレインはもう気づいていた。
「やりすぎだ」
レインは回し蹴りを使って魔導士を後方へと吹き飛ばせば、走り出して間髪入れずに左腕からパンチを繰り出す。次に右腕、右足の上段蹴り、右足を軸にして流れるように左足を回して相手の胴体を蹴る。レインの猛攻に魔導士は顔を歪める。テレポートをしようにもレインがさせなかった。レインは続いて手のひらを魔導士の腹に押し込む。
「オーガンズショック」
銃声のような音が森に響き渡る。魔導士は吹っ飛んだりはしなかったが、レインが腹から手を放すと魔導士は地面に膝をついて勢いよく血を吐く。
「お前の内臓を潰した。時期に死ぬだろうな」
それでもなお魔導士は攻撃の手を止めようとしなかった。地面にひれ伏してもなおレインを睨み続け、絶えかけの虫のようにピクピクと指を動かして微量の雷を放出していた。あまりにも酷いその姿にレインは顔をしかめる。
「誰がこんなことを……」
レインは魔導士の内臓を確認することは憚られるが、おおよそ心臓は黒くなっているのだろうとは予想できた。それと同時にもしかしたら故郷周辺の地域で想像以上に大きな事件が起きているのではないかとも予想した。魔物や人の暴走。それも死ぬまで敵と戦い続けるのだ。
あまりにも非倫理的な事態にレインははらわたが煮え繰り返る思いをする。一人で冒険をしているとはいえ、故郷には大切な家族だって友人だっている。もしその人たちがあの暴走をしたら、とレインは想像するだけでも身震いした。
数十分かけてレインは魔導士を弔うための墓を作った。魔導士の体からはもう黒の瘴気は発せられていなかった。安らかに眠る魔導士の顔を見ながらレインは「ご冥福をお祈りします」とだけ呟いた。
レインはその場を後にしてまた森の中を北上する。道中で野盗だとか魔物に遭遇せず、日は沈んでいく。そこでレインは自分が間抜けだということに気づく。ハンドバッグの中身を確認すると木炭がなかったのだ。おそらく先日野営した場所に忘れたのだろう。レインは目を凝らして辺りを見てみるが灯りや煙突から出る煙が都合よく見つかるわけではなかった。
「どうしようか」レインは考えるようにあごを撫でる。
炎の魔法を使うにも、消えたらまた起きて魔法を使わなければならない。それに比べて木炭は一日中火を保つので安心して眠れるのだ。
「仕方ないか」
レインはその場で野営をしようとする。その時、ふとなにか香ばしい匂いがレインの鼻をくすぐる。レインは再度辺りを見渡すが暗闇のせいで民家の影はない。
「スキルハンター。セントロード」
レインの嗅覚は何倍にも敏感になり、香りを辿っていく。数分歩き続けてレインがたどり着いたのは窓のない黒の板で作られた家だった。異様な作りにレインは首を傾て家の周りを歩いて扉を見つける。
「大丈夫だよな?」
昨今の出来事が頭によぎって、もしやこの家の人も暴走しているのでは、とレインは扉を開けるのを躊躇する。とはいえ絶対零度の夜を明けるためなら多少の戦闘も必要か、とレインは完結する。
「もしもーし、どなたかいますかー?」
レインは握り拳で三回扉を叩く。いくらか時間が経つと扉は開けられる。レインは少し身構えるが相手の目を見てすぐに構えを解いた。
「誰だ、お前」
中から出てきたのは胸あたりまで顎髭が伸びているずんぐりむっくりした男だ。甲冑を着ていて背中にはおよそ三メートルはある大斧を二本バツを描くように携えている。男はただの肥満、というわけではなく岩のような筋肉が腕を覆っていて身長も百九十はある。レインは男に若干恐怖を抱く。
「冒険者です。野営するための木炭を無くしてしまいまして……泊めていただけないでしょうか? 一晩だけでいいです」
大男は「冒険者……?」と眉をひそめる。
「まあいい。とにかく入ってくれ。冒険者なら伝えたいことがいっぱいある」
レインは安堵の息を漏らして大男の家へ上がる。
「テレポートが面倒だな」
レインはいかにもめんどくさそうな表情を浮かべて「スキル格闘家」と唱える。
「雷対身」とスキルを使うとレインの体を黄色のオーラが囲む。レインの目の前にテレポートした魔導士は両手を突き出して雷の玉を至近距離で放とうとする。レインは相手の胴体に右足で横蹴りをいれると、魔導士は空中へ吹き飛ぶ。
「耐性をいれても多少ピリッとくるな」
今のレインにはそんなことは取るに足らない事実だ。魔導士は困惑した表情で腹を抑えているが攻撃の手を休めなかった。先と同じようにレインの背後へ回るがレインはもう気づいていた。
「やりすぎだ」
レインは回し蹴りを使って魔導士を後方へと吹き飛ばせば、走り出して間髪入れずに左腕からパンチを繰り出す。次に右腕、右足の上段蹴り、右足を軸にして流れるように左足を回して相手の胴体を蹴る。レインの猛攻に魔導士は顔を歪める。テレポートをしようにもレインがさせなかった。レインは続いて手のひらを魔導士の腹に押し込む。
「オーガンズショック」
銃声のような音が森に響き渡る。魔導士は吹っ飛んだりはしなかったが、レインが腹から手を放すと魔導士は地面に膝をついて勢いよく血を吐く。
「お前の内臓を潰した。時期に死ぬだろうな」
それでもなお魔導士は攻撃の手を止めようとしなかった。地面にひれ伏してもなおレインを睨み続け、絶えかけの虫のようにピクピクと指を動かして微量の雷を放出していた。あまりにも酷いその姿にレインは顔をしかめる。
「誰がこんなことを……」
レインは魔導士の内臓を確認することは憚られるが、おおよそ心臓は黒くなっているのだろうとは予想できた。それと同時にもしかしたら故郷周辺の地域で想像以上に大きな事件が起きているのではないかとも予想した。魔物や人の暴走。それも死ぬまで敵と戦い続けるのだ。
あまりにも非倫理的な事態にレインははらわたが煮え繰り返る思いをする。一人で冒険をしているとはいえ、故郷には大切な家族だって友人だっている。もしその人たちがあの暴走をしたら、とレインは想像するだけでも身震いした。
数十分かけてレインは魔導士を弔うための墓を作った。魔導士の体からはもう黒の瘴気は発せられていなかった。安らかに眠る魔導士の顔を見ながらレインは「ご冥福をお祈りします」とだけ呟いた。
レインはその場を後にしてまた森の中を北上する。道中で野盗だとか魔物に遭遇せず、日は沈んでいく。そこでレインは自分が間抜けだということに気づく。ハンドバッグの中身を確認すると木炭がなかったのだ。おそらく先日野営した場所に忘れたのだろう。レインは目を凝らして辺りを見てみるが灯りや煙突から出る煙が都合よく見つかるわけではなかった。
「どうしようか」レインは考えるようにあごを撫でる。
炎の魔法を使うにも、消えたらまた起きて魔法を使わなければならない。それに比べて木炭は一日中火を保つので安心して眠れるのだ。
「仕方ないか」
レインはその場で野営をしようとする。その時、ふとなにか香ばしい匂いがレインの鼻をくすぐる。レインは再度辺りを見渡すが暗闇のせいで民家の影はない。
「スキルハンター。セントロード」
レインの嗅覚は何倍にも敏感になり、香りを辿っていく。数分歩き続けてレインがたどり着いたのは窓のない黒の板で作られた家だった。異様な作りにレインは首を傾て家の周りを歩いて扉を見つける。
「大丈夫だよな?」
昨今の出来事が頭によぎって、もしやこの家の人も暴走しているのでは、とレインは扉を開けるのを躊躇する。とはいえ絶対零度の夜を明けるためなら多少の戦闘も必要か、とレインは完結する。
「もしもーし、どなたかいますかー?」
レインは握り拳で三回扉を叩く。いくらか時間が経つと扉は開けられる。レインは少し身構えるが相手の目を見てすぐに構えを解いた。
「誰だ、お前」
中から出てきたのは胸あたりまで顎髭が伸びているずんぐりむっくりした男だ。甲冑を着ていて背中にはおよそ三メートルはある大斧を二本バツを描くように携えている。男はただの肥満、というわけではなく岩のような筋肉が腕を覆っていて身長も百九十はある。レインは男に若干恐怖を抱く。
「冒険者です。野営するための木炭を無くしてしまいまして……泊めていただけないでしょうか? 一晩だけでいいです」
大男は「冒険者……?」と眉をひそめる。
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