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5話 呪いの魔導士

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 冬の冷えた空気の中、太陽が森の中で寝ているレインの顔にスポットライトを当てる。レインは分厚い寝袋の中で寝返りを打って日差しから目を背ける。このまま眠り続けるかと思いきや、レインは遠くから聞こえる爆発音で目が覚める。

「うぅっ……」

 やる気の出ない目覚ましでレインは不快そうな表情を浮かべながら上半身を起こす。周りを見渡しても異変はない。レインは遠くで誰かが激しい戦闘を行っていると予測を立てて野営の片付けを行う。寝袋についた朝露を払った後、レインはそれを魔法のハンドバッグの中にしまう。

「相変わらず寒いな」

 肩をぶるっと震わせた後、レインは黒のロングコートを着用してその場を後にする。ザクザクと足音を立ててレインは相変わらず北上し続ける。

「まさか任務のダンジョンがあんなに遠いとは……」

 後悔を含んだ声色でレインは呟く。レインは冒険者の仕事で南にあるダンジョンに出向いたのだが、道のりは気が遠くなるほど遠かった。歩行して一週間と四日かかる道をレインは今歩いている。

 レインは狩猟者の村で馬車を借りればよかった……など後悔していると、なにやら誰かに囲まれているのに気づく。レインは冷静にハンドバッグから大楯を取り出して辺りを見渡す。

 レインが右を向いたその瞬間、木々の隙間から矢が飛び出してくる。レインは大楯を軽々と矢の方向へ向けて攻撃を防ぐ。

「矢……この地域で使う魔物はゴブリンしかいないな」

 レインの予想通り、背後から六匹のゴブリンが雄叫びを上げながら剣を持って飛び出してきた。

「スキルクルセイダー。タイタンズハンド」

 レインがスキルを放つと、盾から前方の広範囲に向けて衝撃波が流れる。ゴブリンたちは空中で後ろに吹き飛ばされる。

「ギィィ!!」

 ゴブリンたちは痛みを忘れたかのようにすぐに立ち上がり再度レインの方に突っ込んでいく。

「暴走してるのか?」

 レインはそこで昨日のメデュアのことを思い出す。やつも暴走していた。もしかしたらこのゴブリンも……と憶測立てるが今は目の前の敵に集中しなければならない。

 レインはゴブリンを気絶させることから殺すことに目標を変更する。ハンドバッグに大楯をしまえばレインは赤褐色の大剣を取り出す。

「スキルバーサーカー。ストレイトライン」

 スキルの名の通りレインは大剣を横一線に切り抜く。飛びかかってきたゴブリンたちの体は真っ二つに裂けて飛び出した内臓とともにドシャッと地面に落ちる。それと同時に背後からはまた弓矢が飛んでくる。

「っ……!」

 レインはハンドバッグから剣を引き抜いて無理やり腰を捻って矢を斬りつける。それでも森の中にいる敵の攻撃は止まない。続いては雷の玉が飛んでくる。レインが剣を虚空へ投げると雷の玉は剣の方へ吸い込まれるように軌道がズレる。レインは武器を取り出さずに「スキル狩猟者ハンター」と詠唱する。

「ホークグランス」

 レインの視界は青色になる。木は真っ青で黒の輪郭線で描かれている。木の後ろには本来見えるはずでない弓を持ったゴブリンの姿が真っ赤になって映し出されていた。その数はおよそ四匹。レインはハンドバッグからゴム手袋を取り出してそれを着ける。その後雷の玉を受けた剣を拾い上げてレインは森の中へ走り出す。

 ゴブリンが隠れている木の後ろにレインは飛び出して、相手に叫ぶ暇すら与えず首をはねる。

「ギ、ギィ!!」

 他のゴブリンたちは混乱してないのか、弓を放りだして森の奥へと走っていく。

「こいつらは暴走していないのか……」

 レインは首を傾げて剣の構えを緩める。だが本当の脅威はまだ残っていた。レインは上空から降ってくる雷の玉を間一髪で避ける。直撃した地面は綺麗に穴が空いている。

「これはゴブリンのではないのか」

 レインはそう呟いて上空を見上げて映った景色に息を呑む。そこには黒色の瘴気を放つ一人のヒューマンの魔導士がいたのだ。瞳は赤く光っていて肌はところどころ青ざめている。

「おい君。なにがあったんだ?」

 レインは大きな声で呼びかけるが相手は魔法で答える。手から放たれた鋭い雷は目にも止まらない速さでレインを襲うがレインはパッと消える。

「スキルアサシン。シャドウソー」

 レインは魔導士の背後にパッと現れる。そのままレインはハンドバッグから取り出した短剣を魔導士の後頭部に刺そうとする。攻撃は直撃するかと思いきや魔導士もテレポートして避ける。レインは虚空を切り裂いてそのまま落下するも怪我なく着地した。しかし目標を見失ってしまう。

 魔導士は雷を全身纏いながらレインの背後に現れ、雷を一層強くした左手でレインを殴ろうとする。レインはなんとか横に体を捻ってその攻撃をかわしてハンドバッグから剣を取り出す。

「少々厄介だな……」

 レインは「ウゥゥ」と唸る魔導士を見据える。
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