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1章 〜我ら初心者冒険者〜
2話
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ゲームオタクの羽美。ギャル水無月。生徒会長の宮野。寡黙な浦星。
少々、いや、かなり心配なメンツではあるが今は羽美の言う通りにすればいいのだろう。という考えは少しづつ定着している。
4人がしばらく街道らしき道を進んでいると、空からなにかが羽ばたく音が聞こえる。
「なに、あれ」
水無月は空を指差す。そちらを見ると、4枚の紙が飛んできた。翼も生えてないくせに嫌に羽ばたく音が目立つ。紙は俺らそれぞれの足元に落ちてきた。
「これは……」
羽美は紙を拾う。他の人も続いて紙を拾う。
紙には数字などがいっぱい書かれている。
羽美の紙にはは筋力10、とか魅力16とか。
「これ、trpgだ……」
羽美は嬉しそうに言う。
「ねー、私の知力8なんだけど」、と水無月が言う。
「あんた、かなりアホじゃん」
羽美はニコニコしながら水無月に言う。
「はぁ!? あんたはいくつよ!」
「私は13。8って、私の知ってる中じゃゴブリンより頭悪いことになる」
続いて生徒会長だ。
「私は14のようだ。それより、坂ノ部さんはこの紙について何か知っているのかな?」
羽美は頷く。
「これ、ここに書いてるけど冒険者シートって言うの。ここに私たちが覚えてる魔法やら技が記載されるはず。だけどまだ書いてないってことは、やはり就職せねば」
就職。ゲームはあまりやった事ない3人でも、きっと〈剣士〉とか〈魔法使い〉のことだろうと考える。
「ウチそんな頭悪くないもん……」
水無月はちょっと悲しそうにする。
「そういや、浦星はどんくらい?」
羽美は後ろに着いてきてる浦星に尋ねる。肩を子鹿のように震わせるが、なんとか話してくれそうだ。
「わた……し、16です……」
「1番高いじゃん。そういえば、浦星ってずっとテストの点数1位だもんね」
浦星はそっぽを向きながら「ありがとう」と答える。
とりあえず会話になってよかったと羽美は思う。
4人で街道を歩き続けておよそ30分。灰色の壁で囲まれた街らしきものが見えた。風貌はさながらファンタジー。指◯物語とかで見たことのある造形だ、と羽美は呟く。
「やったー! ほんっとお腹空いたー」
水無月は感想も無しに走っていく。
「ちょっと、待ちなさい」
生徒会長も水無月についていく。
「浦星さんも来る?」
羽美は後ろにいる浦星に尋ねる。声は出してくれないが、頷いた。
ようやく異世界という雰囲気を堪能できたところで、羽美たちは街の門の前までたどり着く。そこにはファンタジーお馴染みの門番がいる。
「とまれ。何者だ」
「ねー。通して」
水無月は門番の話を聞かずに入ろうとする。
「待ちなさい!」
生徒会長は水無月の肩を引っ張って代わりに前に出る。
「あの、私たち道に迷っているのです。ここらは見慣れない土地で、持っていた地図すら無くしてしまいました」
「……本当か?」
宮野は頷いて先ほど手に入れた冒険者シートを門番に見せる。
「このように、私たちは冒険者になるためにここへやって来ました」
門番はシートを眺めながら再度宮野の方を見る。
「これを発行した場所に、就職できる場所はなかったのか?」
「っ……はい。だからこの街にまで来ました」
門番は門の近くにある小さな詰め所まで行って、大きな紙を持ってくる。
「これはこの地方の地図だ。街の施設についても書かれてあるからな」
さっその難所だ。浦星は相変わらず不安そうな表情をしている。羽美も真剣な表情をしている。
「羽美、ここ打開する方法ないの?」、と水無月は聞く。
「分からない。けど、判断力の数値は会長が1番高い」
「そうかもしれないけど……まあ、でも無理にウチらが会話に混ざっても余計かな」
羽美は静かに頷く。
門番は地図を小一時間眺める。
「そうだな。確かにここらに就職できる場所はない」
会長は小さく安堵の息を漏らす。
「まあ、怪しい点はあるがいいだろう。早く入れ」
門番は街に続く門を開く。羽美たちは会長と共に街の中へと入っていく。
「会長、よくやりましたね」
「ほんっと、心臓が爆発するところだったわ。ラッキーだったわ。適当に言ったことの辻褄が合って」
宮野は胸を撫で下ろす。
「先輩、かっこよかったですよ」
そう羽美が言うと、宮野は照れくさそうに微笑む。
やっとのことで入った街の中は、様々な人の波でごった返していた。中には地球にはない風貌の人もいる。例えば動物の頭をした人、髭が異常に長い人、蝶の羽が生えている小人など。
「それじゃあ羽美さん。ここからどうすればいいのかしら?」
会長は元気な声で尋ねる。
「あ、私?」
「そうよ。だって、あなたがなんか1番知ってそうじゃん」
水無月はそこら辺を見回しながら言う。
「まずはジョブだね。はやくギルドとかに行こう」
「なにぎるどって」、と水無月。
「いや、えっと……組合? 語源は中世ヨーロッパの……もういいや」
「諦めないでーー」、と水無月。
「ふふ」、と宮野は笑う。
4人は街の中をそれなりに堪能してギルドまで辿り着く。辿り着くまでに、水無月が悪そうな男に絡まれたり、浦星がスリに会いそうにもなった。とはいえ、今の彼女たちに盗まれるようなものはない。
「いやー、治安悪いね」
水無月は苦笑いしながらギルドの扉を開く。
「どうだろう。良い方なんじゃないかな。大体、こんな感じのファンタジーでは、もっと治安が悪いところもあると思う」
「そうなんだ」
興味なさげに水無月は返事をして、ギルドの中に入っていく。
「ほんっと知力8。早く入りましょう」
「まあまあ」、と宮野は苦笑して羽美をたしなめる。
「まあいいや。早くジョブを決めよう」
少々、いや、かなり心配なメンツではあるが今は羽美の言う通りにすればいいのだろう。という考えは少しづつ定着している。
4人がしばらく街道らしき道を進んでいると、空からなにかが羽ばたく音が聞こえる。
「なに、あれ」
水無月は空を指差す。そちらを見ると、4枚の紙が飛んできた。翼も生えてないくせに嫌に羽ばたく音が目立つ。紙は俺らそれぞれの足元に落ちてきた。
「これは……」
羽美は紙を拾う。他の人も続いて紙を拾う。
紙には数字などがいっぱい書かれている。
羽美の紙にはは筋力10、とか魅力16とか。
「これ、trpgだ……」
羽美は嬉しそうに言う。
「ねー、私の知力8なんだけど」、と水無月が言う。
「あんた、かなりアホじゃん」
羽美はニコニコしながら水無月に言う。
「はぁ!? あんたはいくつよ!」
「私は13。8って、私の知ってる中じゃゴブリンより頭悪いことになる」
続いて生徒会長だ。
「私は14のようだ。それより、坂ノ部さんはこの紙について何か知っているのかな?」
羽美は頷く。
「これ、ここに書いてるけど冒険者シートって言うの。ここに私たちが覚えてる魔法やら技が記載されるはず。だけどまだ書いてないってことは、やはり就職せねば」
就職。ゲームはあまりやった事ない3人でも、きっと〈剣士〉とか〈魔法使い〉のことだろうと考える。
「ウチそんな頭悪くないもん……」
水無月はちょっと悲しそうにする。
「そういや、浦星はどんくらい?」
羽美は後ろに着いてきてる浦星に尋ねる。肩を子鹿のように震わせるが、なんとか話してくれそうだ。
「わた……し、16です……」
「1番高いじゃん。そういえば、浦星ってずっとテストの点数1位だもんね」
浦星はそっぽを向きながら「ありがとう」と答える。
とりあえず会話になってよかったと羽美は思う。
4人で街道を歩き続けておよそ30分。灰色の壁で囲まれた街らしきものが見えた。風貌はさながらファンタジー。指◯物語とかで見たことのある造形だ、と羽美は呟く。
「やったー! ほんっとお腹空いたー」
水無月は感想も無しに走っていく。
「ちょっと、待ちなさい」
生徒会長も水無月についていく。
「浦星さんも来る?」
羽美は後ろにいる浦星に尋ねる。声は出してくれないが、頷いた。
ようやく異世界という雰囲気を堪能できたところで、羽美たちは街の門の前までたどり着く。そこにはファンタジーお馴染みの門番がいる。
「とまれ。何者だ」
「ねー。通して」
水無月は門番の話を聞かずに入ろうとする。
「待ちなさい!」
生徒会長は水無月の肩を引っ張って代わりに前に出る。
「あの、私たち道に迷っているのです。ここらは見慣れない土地で、持っていた地図すら無くしてしまいました」
「……本当か?」
宮野は頷いて先ほど手に入れた冒険者シートを門番に見せる。
「このように、私たちは冒険者になるためにここへやって来ました」
門番はシートを眺めながら再度宮野の方を見る。
「これを発行した場所に、就職できる場所はなかったのか?」
「っ……はい。だからこの街にまで来ました」
門番は門の近くにある小さな詰め所まで行って、大きな紙を持ってくる。
「これはこの地方の地図だ。街の施設についても書かれてあるからな」
さっその難所だ。浦星は相変わらず不安そうな表情をしている。羽美も真剣な表情をしている。
「羽美、ここ打開する方法ないの?」、と水無月は聞く。
「分からない。けど、判断力の数値は会長が1番高い」
「そうかもしれないけど……まあ、でも無理にウチらが会話に混ざっても余計かな」
羽美は静かに頷く。
門番は地図を小一時間眺める。
「そうだな。確かにここらに就職できる場所はない」
会長は小さく安堵の息を漏らす。
「まあ、怪しい点はあるがいいだろう。早く入れ」
門番は街に続く門を開く。羽美たちは会長と共に街の中へと入っていく。
「会長、よくやりましたね」
「ほんっと、心臓が爆発するところだったわ。ラッキーだったわ。適当に言ったことの辻褄が合って」
宮野は胸を撫で下ろす。
「先輩、かっこよかったですよ」
そう羽美が言うと、宮野は照れくさそうに微笑む。
やっとのことで入った街の中は、様々な人の波でごった返していた。中には地球にはない風貌の人もいる。例えば動物の頭をした人、髭が異常に長い人、蝶の羽が生えている小人など。
「それじゃあ羽美さん。ここからどうすればいいのかしら?」
会長は元気な声で尋ねる。
「あ、私?」
「そうよ。だって、あなたがなんか1番知ってそうじゃん」
水無月はそこら辺を見回しながら言う。
「まずはジョブだね。はやくギルドとかに行こう」
「なにぎるどって」、と水無月。
「いや、えっと……組合? 語源は中世ヨーロッパの……もういいや」
「諦めないでーー」、と水無月。
「ふふ」、と宮野は笑う。
4人は街の中をそれなりに堪能してギルドまで辿り着く。辿り着くまでに、水無月が悪そうな男に絡まれたり、浦星がスリに会いそうにもなった。とはいえ、今の彼女たちに盗まれるようなものはない。
「いやー、治安悪いね」
水無月は苦笑いしながらギルドの扉を開く。
「どうだろう。良い方なんじゃないかな。大体、こんな感じのファンタジーでは、もっと治安が悪いところもあると思う」
「そうなんだ」
興味なさげに水無月は返事をして、ギルドの中に入っていく。
「ほんっと知力8。早く入りましょう」
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