約束のときを夢見て

プロローグ

　はるか昔、まだ僕が子供で人としての自由があった頃一度だけ流れ星を見た。
　満天の星がいくつも落ちてくる星を捕まえようとそう思った僕は、一人夜空からこぼれ落ちる星を追いかけて走っていた。
　夢中になって走り回って、ハッと気づいたときには僕は一人薄暗い森の中で迷子になっていた。
　薄暗い森の中で聞こえてくるのは、夜行性の鳥の声、誰かと聞くその声はとても心地良いものだが、幼子がたった一人の夜の森で聞くその声はとても恐ろしいものだったのを、今もよく覚えている。
　泣きながらきっと自分を探しているであろう父を呼び続け、いつしか泣くのにも疲れ果てうずくまって泣いていた。
　そんなとき、僕の前に新しい星が現れた。

「おや坊や、こんな森の中でいったいなにをしているの？」

　泣きつかれ、ぐったりとしていた僕の目の前にいたのは真っ白な身体をしたとても美しい一匹の龍でした。

「きれぇ」

　こちらを見つめる竜は全身から光を放った。
　眩しさのあまり目を閉じた僕が、次に目を開けたときそこにいたのは一人の赤子を抱いた竜族の女性であった。
　僕は息をするのも忘れ目の前に現れた女性に見惚れていると、赤子を抱いた竜族の女性は、僕を見ながらなにかに驚いたかのように目を見開いていた。

「なんだ、坊や。お前、人の子かと思えば───の子か……全くとんだ拾い物をしたものだ」

　そこからのことはあまり良く覚えていない。
　あのあと僕は女性に抱えられながら、いつの間にか眠ってしまい、目が冷めたときには僕は自分の家のベッドの上だった。
　眠りに落ちる前、女性は僕に何かを行った気がする。
　なにを言われたのか、今となってはもうどうでもいい。
　今更思い出したところで意味がない。なぜかって？だって、僕はもうすぐ死ぬのだから………