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9.図書室プレゼントされたんだけど
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寝た日から、俺達は喧嘩とかもすることなく、仲が深まった気がする。気がするっていうのは、やっぱちんこ突っ込まれると気持ちいいし、湖上を思い出すから。
アレクは湖上じゃないけど、それでもベッドでのアレクは、昔を思い出させる。キスが長くて、俺の体に優しく触れたと思ったら、結構がつがつしているとこ。俺は現代でもノンケだったから、どうして湖上が俺みたいなスタイルとか良くない、男の体に欲情するのか、理解できなかった。
アレクからも強い視線を感じて――恥ずかしいけど、俺に勃起してくれるのは嬉しい。
『可愛い』
『愛してるよ、ダーナ』
『君は星のきらめき』
セックスしてから毎日、同じベッドで寝ている。今まで遠慮して、俺にキスするぐらいだったのが嘘みたいに、アレクは俺に触れてくる。それでやった後のピロートークも怠らない。
湖上みたいに、くすぐったくなる言葉を重ねて、俺にキスをする。腕の中に抱き込まれて、アレクの匂いを感じて、幸せ……じゃない。
アレクに毎晩、求められるようになってから、俺の不安は大きくなっていった。
肌ざわりのよい絹の服に、三食昼寝付きどころか、ティータイムが午前と午後に二回。美味しいお茶に、新鮮な果物、チョコレートに砂糖菓子。ベリーの味付けで満足していたのが、信じられなかった。
こんな贅沢な食事と生活に慣れて、アレクに……国の権力者に捨てられたら? アレクに飽きられて、また外に放り出されたら……?
生きていけない
もうベリーの味付けマフィンとか、絶対食べたくない。大量の水で薄めたワインも嫌だ。ずっとこの生活を続けたい。そのためにも、アレクからの愛情は必須。
アレクに捨てられたくない
セックスして、湖上にそっくりなアレクが好きだという気持ちは、日に日に高まっていた。それと同じくらい、不安が膨張していた時だった。
アレクを怒らせないよう従順にしていたのが良かったのか、ある時『プレゼントだよ』と、離れを案内された。
入ると、棚いっぱいの本。彼は図書室をプレゼントしてくれた。
『ここは君のものだから。好きに使って』
おまけに個人図書室は、宮殿から少し離れた場所にあり、騎士のイリヤは待機していると言う。人の目を気にせず済むことに、自由を感じた。
ずーっと監視するような、騎士の目が嫌だ。信用されてないんだってのが丸わかり。そんなやつが、図書室には入ってこない!
最高!
おとなしくしていたご褒美なのかな。他にも服とか、宝石、弾けない楽器に、アレクは毎日、プレゼントを送ってくれた。でもやっぱり、一番うれしかったのは図書室。こいつのことが心の底から好きだって――俺は彼に抱き着いた。
異世界に飛ばされて、つらかったのは教会の環境もあるけど、情報に触れられないことも大きかった。
公共の図書館に行きたくても、教会時代、自由時間が少なくいけなかった。教会内部の図書館だって、一時間滞在できたか怪しい。
スマホとかない世界で、本かフルークブラットが、情報を得られる手段。それでぎっしり本が詰まった棚に、俺は飛び上がった。
これで、元の世界に戻る手段を見つけられるかもしれない!
そう、喜びはもう一つ。
これはアレクの機嫌を伺う内に、芽生えた目的だった。
元の世界に戻りたい
不思議だった。貧しい教会で生活していた時は、しょうがないのかなってあきらめて、ここでの生活を送ろうと考えていた。
それが王宮に上がって、贅沢な時間、そしてアレクと接する時間が増えて、大きくなっていった。
アレクのことが好きだ、抱き合ってから毎晩、同じベッドで寝ている。
でも俺には自立する手段がない。自立できないって、ある意味、自由がないのと一緒じゃないの? だから、ここはやっぱり俺のいる場所じゃないんだよ。
図書室をプレゼントされてから、俺はティータイムを早めに切り上げ、図書室に入り浸るようになった。
外には出れないけど、広々とした空間で一人。あのうるさい騎士もいない、最高の場所。
俺は手あたり次第、本を読んでいった。この異世界には、現代社会を生きてたら信じられないけど、魔法というのがある(らしい)。はっきり言えないのは、俺は異民で、魔法を見たことがなかったから。
教会では教えて貰えなかったし、それに王宮の家庭教師も教えてくれない。なんで教えてくれないんだろうって、何回お願いしても、はっきりした回答もない。
だから自力でなんとかするしかないんだけど……
俺は開いたページにずらずら並ぶ難解文字に、さっそく折れかけていた。教会で何とか習得した文字じゃない。多分、呪文なんだろうけど、解読できない。
俺は、解読方法は無いか、家庭教師とか、あと嫌だったけど――イリヤにも聞いた。みんな首をかしげるばっかりで、分からない。
諦めきれなくて、とりあえず本を漁ること数週間……呪文を解読できなくても、図書室通いが日課になっていた。
今日もまた、午前中は会議に出席するアレクを見送り、図書室直行。また懲りずに、午後は妃教育が終わると、さっさと図書室に移動した。
一人、自由な空気を吸っていると、奥から物音がした。
俺以外、人はいないはずなのに……怖い気持ちはなく、奥に向かった。そっと棚を見ると、侍女が一人、本を熱心に覗き込んでいた。
アレクは湖上じゃないけど、それでもベッドでのアレクは、昔を思い出させる。キスが長くて、俺の体に優しく触れたと思ったら、結構がつがつしているとこ。俺は現代でもノンケだったから、どうして湖上が俺みたいなスタイルとか良くない、男の体に欲情するのか、理解できなかった。
アレクからも強い視線を感じて――恥ずかしいけど、俺に勃起してくれるのは嬉しい。
『可愛い』
『愛してるよ、ダーナ』
『君は星のきらめき』
セックスしてから毎日、同じベッドで寝ている。今まで遠慮して、俺にキスするぐらいだったのが嘘みたいに、アレクは俺に触れてくる。それでやった後のピロートークも怠らない。
湖上みたいに、くすぐったくなる言葉を重ねて、俺にキスをする。腕の中に抱き込まれて、アレクの匂いを感じて、幸せ……じゃない。
アレクに毎晩、求められるようになってから、俺の不安は大きくなっていった。
肌ざわりのよい絹の服に、三食昼寝付きどころか、ティータイムが午前と午後に二回。美味しいお茶に、新鮮な果物、チョコレートに砂糖菓子。ベリーの味付けで満足していたのが、信じられなかった。
こんな贅沢な食事と生活に慣れて、アレクに……国の権力者に捨てられたら? アレクに飽きられて、また外に放り出されたら……?
生きていけない
もうベリーの味付けマフィンとか、絶対食べたくない。大量の水で薄めたワインも嫌だ。ずっとこの生活を続けたい。そのためにも、アレクからの愛情は必須。
アレクに捨てられたくない
セックスして、湖上にそっくりなアレクが好きだという気持ちは、日に日に高まっていた。それと同じくらい、不安が膨張していた時だった。
アレクを怒らせないよう従順にしていたのが良かったのか、ある時『プレゼントだよ』と、離れを案内された。
入ると、棚いっぱいの本。彼は図書室をプレゼントしてくれた。
『ここは君のものだから。好きに使って』
おまけに個人図書室は、宮殿から少し離れた場所にあり、騎士のイリヤは待機していると言う。人の目を気にせず済むことに、自由を感じた。
ずーっと監視するような、騎士の目が嫌だ。信用されてないんだってのが丸わかり。そんなやつが、図書室には入ってこない!
最高!
おとなしくしていたご褒美なのかな。他にも服とか、宝石、弾けない楽器に、アレクは毎日、プレゼントを送ってくれた。でもやっぱり、一番うれしかったのは図書室。こいつのことが心の底から好きだって――俺は彼に抱き着いた。
異世界に飛ばされて、つらかったのは教会の環境もあるけど、情報に触れられないことも大きかった。
公共の図書館に行きたくても、教会時代、自由時間が少なくいけなかった。教会内部の図書館だって、一時間滞在できたか怪しい。
スマホとかない世界で、本かフルークブラットが、情報を得られる手段。それでぎっしり本が詰まった棚に、俺は飛び上がった。
これで、元の世界に戻る手段を見つけられるかもしれない!
そう、喜びはもう一つ。
これはアレクの機嫌を伺う内に、芽生えた目的だった。
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それが王宮に上がって、贅沢な時間、そしてアレクと接する時間が増えて、大きくなっていった。
アレクのことが好きだ、抱き合ってから毎晩、同じベッドで寝ている。
でも俺には自立する手段がない。自立できないって、ある意味、自由がないのと一緒じゃないの? だから、ここはやっぱり俺のいる場所じゃないんだよ。
図書室をプレゼントされてから、俺はティータイムを早めに切り上げ、図書室に入り浸るようになった。
外には出れないけど、広々とした空間で一人。あのうるさい騎士もいない、最高の場所。
俺は手あたり次第、本を読んでいった。この異世界には、現代社会を生きてたら信じられないけど、魔法というのがある(らしい)。はっきり言えないのは、俺は異民で、魔法を見たことがなかったから。
教会では教えて貰えなかったし、それに王宮の家庭教師も教えてくれない。なんで教えてくれないんだろうって、何回お願いしても、はっきりした回答もない。
だから自力でなんとかするしかないんだけど……
俺は開いたページにずらずら並ぶ難解文字に、さっそく折れかけていた。教会で何とか習得した文字じゃない。多分、呪文なんだろうけど、解読できない。
俺は、解読方法は無いか、家庭教師とか、あと嫌だったけど――イリヤにも聞いた。みんな首をかしげるばっかりで、分からない。
諦めきれなくて、とりあえず本を漁ること数週間……呪文を解読できなくても、図書室通いが日課になっていた。
今日もまた、午前中は会議に出席するアレクを見送り、図書室直行。また懲りずに、午後は妃教育が終わると、さっさと図書室に移動した。
一人、自由な空気を吸っていると、奥から物音がした。
俺以外、人はいないはずなのに……怖い気持ちはなく、奥に向かった。そっと棚を見ると、侍女が一人、本を熱心に覗き込んでいた。
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